ショウ・ブラザーズの「水滸伝」とその続編。

連休中にYoutubeで観漁っていたショウ・ブラザーズ、略してショウブラ(と書いて、The Golden Eggsの台詞で「ニュー・ブラック・ポイズン、ニューブラです」と言うのがあったのを思い出したが、まあ関係あるまい)の映画の中に、「水滸伝」の続編があった。「水滸伝」は以前にシネフィルイマジカで録画して観ていたが、続編は初めてだ。
一作目は曽頭市との戦い、盧俊義を梁山泊に迎えるくだりで、盧俊義役で丹波哲郎、史文恭役で黒沢年男が出演。オールスター映画的な雰囲気ではあるが、丹波、黒沢と、香港側のスターとして燕青役のデヴィッド・チャンを中心に描かれている。
二作目は方臘討伐の話だが、ストーリーは大いに切り詰められ、杭州でクライマックスを迎える。杭州城攻略作戦と言った感じだ。前作のキャストが引き継がれ、追加もあるが、前作同様燕青を中心に、ティ・ロン演ずる武松、チェン・カンタイ演ずる史進らがクローズアップされている。
ともに原作からところどころ改変されているので、整理、メモしておく。一作目からして既におかしな改変があるものの、二作目ほどではない。

水滸伝(原題「水滸傳」/張徹監督/1972年)



湖(恐らく実際は海)を行く船団の、スケール感あふれる導入。船から下りた兵たちが、馬で砦に向かう。ショウブラのあの橋は、今作では砦の一部分として登場する。馬を追って場面は忠義堂に。酒盛りをする梁山泊の面々が紹介されていく。宋江(谷峰)、呉用(金峰)、林冲(岳華)、李逵(樊梅生)、武松(狄龍)、扈三娘(何莉莉)、王英(鄭雷)、雷横(劉丹)、時遷(午馬、ウー・マ)、楊雄(呉池欽)、石秀(王鐘)、花栄(秦沛)、劉唐(梁尚雲)、魯智深(彭鵬)、朱仝(羅威)、張順(李修賢、ダニー・リー)、張横(何漢洲)、史進(陳観泰)、戴宗(李恒)。
大名府(おそらく)の状況を自ら探りに出かけていた梁山泊の首領、晁蓋の戻りが遅く、心配する宋江。呉用と話していると、晁の字の旗竿が風にあおられて折れる。

場面変わって曽頭市。曽塗(張斌)、曽弄(ここでは曽長官、井[水が3つ])、史文恭(黒澤年男)、曽密(王光裕)、曽索(黄培基)、曽魁(陳全)、曽昇(唐炎燦、ビリー・タン)が集まり、晁蓋を捕らえて東京に送る、梁山泊を潰すと意気を上げる。そこへ砦に戻る晁蓋が近くを通ると報告があったものだからどうしようもない。史文恭と曽家五虎は手勢を引き連れ晁蓋(ここで登場するが首領なのに配役の紹介無し。よく悪役などで見る人だが)を襲い、晁蓋は逃げるが史文恭の矢が命中してしまう。林冲が手下とともに迎えに来て史文恭と戦うが互角。双方とって返す。
砦に戻った晁蓋だが、仇をとるよう言い残して死亡。しかし、全軍で曽頭市を討つとなると留守の砦を官軍に襲われる恐れがある。そこで呉用は、"史文恭の兄弟弟子である盧俊義"を迎え、史文恭を倒そうと画策。養子の燕青も合わせれば、史文恭に勝てるという。
盧俊義(丹波哲郎)は妻を可愛がるより武術の鍛錬に夢中、番頭の李固(田青)から売上の報告があっても修行中だからと聞かず、朝から晩まで稽古。李固が夫人の賈氏(凌玲)といい仲になっているのも仕方が無い。

呉用と李逵が易者と童僕に化けて盧俊義ヘッドハンティング作戦が展開される。しかし作戦は至極あっさりと燕青に見破られ、李逵がすぐさま正体を明かしてひと悶着。盧俊義は二人を捕らえて自邸の牢(?)に入れるが、梁山泊は正しい行いをしていると考えており、二人に向かい、誘いには感謝すると、丁重に送り返そうとする。しかし一方、李固と賈氏はこれを機会に官憲を呼び入れ、盧俊義を陥れようと計画、聞達(南宮勲、懐かしい「必殺ドラゴン鉄の爪」の悪役)と李成(劉剛、ジャッキーの「天中拳」の禿げの師匠役の人に見えるが?)が捕吏を引き連れ襲来。燕青が呉用と李逵を逃がすが、盧俊義は囚われてしまう。
牢では蔡福(胡威)、蔡慶(楊澤霖)が登場。燕青が一人で救出を図るが失敗。李固は蔡福を買収して盧俊義を亡き者にしようとし、一方梁山泊からは戴宗を伴った柴進(張揚)がやって来て蔡福に接触、また、宋江からの布告文(というか脅迫文)が市中にばら撒かれる。
布告に恐れをなした大名府知事梁中書(李允中)と張孔目(沈労)は、盧俊義を棒打ちの上島流しにして梁山泊の矛先を逸らそうとする。流刑の付き添いは董澄(盧葦)と薛覇(李文泰)で、李固はこの二人に道中での盧俊義殺害を依頼。すんでのところで燕青が救出するがまた盧俊義だけ捕まり、原作どおり梁山泊を頼った燕青が楊雄と石秀に出会って本格的な救出作戦へと進んで行く。もちろん、まだ味方が来ないうちに石秀が一人で処刑寸前の盧俊義を救おうとする、あの侠気溢れる名場面は再現されている。

盧俊義と石秀を捕らえている梁中書サイドは梁山泊軍に対抗するため、曽家に協力を依頼する。しかし、二人の死刑執行当日、梁山泊の主要メンバーが市中に潜入し、あっさりと奪還に成功。そしてとっとと逃げねばならないはずなのに、何故かその足で盧俊義邸へ行き李固と賈氏を殺してから、堂々と街を出る。そこでぼんやりと待機していた様子の梁山泊軍と合流し、砦へ向かう。
その途上、ようやく現れたのが史文恭率いる曽頭市の軍勢。しかし何故か正々堂々、6対6で一騎打ちに。史文恭に盧俊義、五兄弟には林冲、武松、李逵、石秀、扈三娘が相対する。林冲、李逵が相手を殺すと、兵卒入り乱れて乱戦へ。やがて残るは史文恭のみとなり、燕青が横からちょっかいを出すに至るが、まともな人格の盧俊義は一方的に史文恭を殺すに忍びない様子。業を煮やした燕青が史文恭を痛めつけ、李逵が斧を腹にぶち込むという、納得のいかない展開に。しかし誇り高い史文恭は辱めを受けるまいと自ら胸を突いて自害する。
めでたしめでたしで一同梁山泊へ帰っていくが、どう考えても盧俊義と史文恭だけがマトモで、後は燕青はじめちょっとおかしいんではないかという後味の悪さが残った。

水滸伝 杭州城決戦(原題「蕩寇誌」 /張徹監督/1975年)



燕青(姜大衛)が李師師(鐘玲玲)を訪ねる場面から。皇帝(張楊)との対面。先触れの「黄門(羅楽林)」とは何か?
タイトル入り、場面変わってテロップ、三大王方貌を倒して東新橋を渡るとのこと。ショウブラのいつもの橋が映り、徐寧(陳沃夫)対呂師嚢(王清)、呂師嚢死亡、徐寧はすでに重傷で、この後亡くなる。
一方董平(陳恵敏、チャーリー・チャン)、独松関で厲天祐を倒すが戦死。
また場面変わって、宋江の本隊が行軍。
杭州攻め、楊雄(呉池欽)、雷横(劉丹)、周通(?)、秦明(雷龍)、劉唐(梁尚雲)、解珍(李維開)、解宝(曽泳佳)戦死。
湧金門に阮小二(利榕傑)と阮小五(唐炎燦、ビリー・タン)が手下を連れて向かう。門の鉄柵と水中の網が連動した罠に掛かり、小五のみ逃げ延びる。

梁山泊忠義堂。盧俊義(丹波哲郎)、宋江(谷峰)、呉用(金峰)、林冲(岳華)、戴宗(李恒)、朱仝(羅威)、阮小七(韋港生)、魯智深(彭鵬)、花栄(秦沛)、蔡福(胡威)、蔡慶(楊澤霖)、扈三娘(何莉莉)、王英(鄭雷)、武松(狄龍)、張横(何漢洲)、張順(李修賢、ダニー・リー)、李逵(樊梅生)、史進(陳観泰)、石秀(王鐘)、孫二娘(于楓)らが集まる。
阮小五の報告を受け、呉用が策を練り、潜入するメンバーを選抜。燕青、史進、石秀、張順、李逵、孫二娘と張青(王光裕)が杭州城へ向かう。

一方、杭州城では方臘(朱牧)と四大将軍の、鄧元覚(修林?)、石宝(陳鳳鎮)、厲天閏(劉剛)、司行方(楊斯、ヤン・スエ)、そして太子である方天定(田青)が待ち構える。
町人が殺されるのを見て憤り、潜入のはずがいきなり暴れまわる李逵。燕青とともに逃げ史進と合流。石秀、張順、張青、孫二娘も合流し潜伏するが、潜入したこと自体はばれてしまう。
状況報告のため出入りの困難な城から出るべく、李逵が陽動作戦に(相対する兵の中に任世官が)。その隙に燕青が城壁を登って脱出。ところが李逵の援護に来た石秀が、石宝の姿を見て、楊雄の仇を討つべく一人残って李逵を逃がす。石秀は石宝を倒すが重傷を負い、敵に囲まれ自害。
燕青は宋江の本幕営へ向かう途中で司行方に出会う。司行方は江南一の力士であると名乗り、燕青と対決。燕青は勝つが止めを刺さず去る。
方天定が鄧元覚、厲天閏を連れ李逵らが潜伏中の宿を襲う。反撃して方天定を捕らえ人質とし、逃げ出すことに成功するが、史進は敵を足止めするためひとり残る。鄧元覚の飛刀を食らいながら厲天閏を倒すも、続々と詰め掛ける方臘軍の兵と戦い続け、ついに力尽きて死ぬ。偵察に出た孫二娘がその様子を仲間たちに伝えると、怒りの余り李逵は大事な人質のはずの方天定を殺してしまう。

鄧元覚と司行方は燕青が戻ってくるところを捕らえようと警備を強化する。
李逵らは方天定の死骸に間もなく梁山泊軍が制圧に来るとの一文を記して城中に吊るす。これで怖気づいた方臘の兵がある程度離脱した模様。
梁山泊軍いよいよ到着。といっても全軍ではない様子。武松の一隊が城の北門を攻め、その隙に燕青が再度潜入。しかし、それを待っていた鄧元覚らの手勢が燕青を尾行。燕青が襲われようとしているのを見た張青と孫二娘は、兵団をひきつけて戦い、討ち死に。しかし燕青は鄧元覚、司行方と兵団に囲まれる。孫二娘のいまわの際に駆けつけた張順と李逵は燕青の許へ。燕青は作戦のため張順を連れて逃げ、李逵が残る。李逵は司行方にのせられて相撲で戦い、苦戦の末に頭から落として殺すが、その直前に隠し持った短剣で刺される。その後も奮闘するが鄧元覚に矛で突かれて死亡。
一方張順は湧金門の罠を解除するためひとり水中へ。罠の鉄柵を持ち上げ網を動かして水軍の進入を助けるが、矢で射殺される。阮小五は鉄柵を支えたまま死んでいる張順を見て、せめて鉄柵を引き上げようと手間取る間に、これも射殺される。
しかし宋江の軍勢はこれで杭州城を攻略、鄧元覚は方臘に逃亡を勧め、残った手勢とともに北門から脱出。そこに待ち受けていた燕青だが、逃げる方臘に気を取られた隙に鄧元覚の矛を受ける。鄧元覚を倒して方臘に追いつき、雑兵と戦うが出血がひどい。そこへ武松が単騎駆けつけて助けに入ろうとするが、木陰に隠れていた方臘に不意打ちされ左腕を切り落とされる。それでも戦う二人、燕青は先に倒れ、ついに力尽きる。武松は方臘を取り押さえるが、宋江軍がようやく追いついたときには、方臘を組み伏せたままなくなっていた。

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