ジュリーニとベルリンフィルの「大地の歌」。

生誕150周年の時にリリースされたEMIのマーラー全集で、カルロ・マリア・ジュリーニ指揮のマーラーを初めて聴いた。シカゴ響との1番だったが、聴き終えてマーラーを聴いていたと言う実感が残らない、不思議な録音だった。良い悪いではなく、兎に角変わっているなあと思った。
しかし、先日、シカゴ響との9番を聴いてみたところ、これは素晴しいもので、今まで聴かずに来たことを悔やむほどだった。が、では他にジュリーニのマーラーは、と探すと、意外なほど少ない。放送録音などを除いたまともなセッションレコーディングとしては、ベルリンフィルとの「大地の歌」ぐらいしか残されていないようだ。しかも、すでにオンラインショップなんかだと在庫があまり無いらしく、実店舗の在庫を探して購入した。



アルトはブリギッテ・ファスベンダー。テノールはメキシコの偉大な歌手フランシスコ・アライサで、寡聞にしてこちらは今回初めて聴く。
ゆったりとして、振幅が大きい。個々の楽器が入れ替わり前に出てくる。トライアングルとかグロッケンシュピールが鮮やかに、妙に生々しく響く。歌手には詳しくないがアライサの歌声は至極正統的なものに聴こえる。一方、ファスベンダーは、シプリアン・カツァリスとのピアノ伴奏版では伴奏に対して強すぎる感じだったが、ここでは寧ろたおやかだ。伴奏とのバランスの問題だったのだろう。オケと組んでの方が良い。
「青春について」や「春に酔えるもの」はもう少し速くて軽やかなものが好みだが、アライサの声に抜け感があるので重たくはならず、心地よい。そして、普通ならやたらと暗くなりがちな告別。緩やかに、けして優美さを失わない伴奏で、徒に深刻になり過ぎないのが好ましい。
全体に、少し柔らかすぎる気はするが、なかなか素晴しい。何より、他のマーラー録音に通じるジュリーニらしさが感じられる。流石に大御所と、讃えるべきだろう。

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