ドラティのマーラー第9番ライヴ。

アンタル・ドラティ指揮のマーラー、9番のライヴ盤が特価になっていたので買ってみた。録音は1984年で、オケはベルリン・ドイツ交響楽団。
ドラティの録音はあまり持っていない上、マーラーは初めてだ。



ゆったりとした演奏。残念ながら音の方は高音が耳につき、痩せた感じもするが、丁寧に波が寄せて返す様に奏でられていく様は悪く無い。興に任せてフレーズを引っ張ると言う感じでは無く、全体的にゆったりとしているので、厭味が無いのだろうか。
第二楽章も同様で、牧歌的な中に多少の暗雲も感じさせつつ、どうにか平穏に過ぎていく。
第三楽章に至って、この演奏の特徴が顕になる。こんなにゆったりとした第三楽章は他に無いのではないだろうか。大抵の場合、少し速めで、不安感や切迫感と、諧謔性、喜劇的な雰囲気とが綯い交ぜになって提示され、それ故に終楽章の美しさが際立つ、と言うのが自分なりに考える"良い第三楽章"だったのだが、これは真逆だ。しかし、面白い。第一楽章の影響が濃い第二楽章と、終楽章とを繋ぐブリッジとして、こういう表現もあるのだなあ、と。ここまでの遅さも、そうでなければこの楽章が浮いておかしなことになっていただろうから、必然と感じられる。
そのまま終楽章に流れ、あとは陶然と聴くばかり。咳などライヴ故の環境ノイズはそこそこあるが、心地よく聴ける録音だった。
と、思ったら、最後に余韻も無く拍手が始まって、ちょっとがっかり。

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