バーンスタインの旧マーラー全集、第9番とまとめ。

レナード・バーンスタインと、ニューヨーク・フィルハーモニック、ロンドン交響楽団とのマーラー交響曲全集、最後に残しておいた第9番を聴き終えた。
この全集録音は、1960年の第4番から始まり、66年の第8番だけなぜかロンドン響との録音で、その後、第10番だけを残し、67年の第6番で一旦休止している。第10番の録音はしばらく間が開いて、1975年に飛ぶ。
第9番の録音は1965年。第2、3、4、5番はすでに録り終えているので、まずまず指揮者とオケ、録音エンジニアの関係も馴染んでいたことだろう。
冒頭、これは演奏か録音か、どちらによるところが大きいのかわからないが、最初から十分聴き取れる音量で始まる。聴こえないぐらいの音量から始まるもの、ゆっくりと音量が上がっていくものなどある中で、これはこの録音の特徴のひとつだろう。淡々と進み、第2楽章、第3楽章はすっきり快速で、するすると流れるように終楽章にたどり着く。そして変わらず淡々と終結していく。
バーンスタインらしさとはどんなものだったか訳がわからなくなり、続けて終楽章のみベルリンフィルとのライヴを聴いてみたら、やはりガチャガチャしていて、ずれたか、やらかしたか、と言う場面がところどころあり、これは駄目だと再認識。さらにバルビローリとベルリンフィルの終楽章も聞いてみたら、こちらの方が遥かに情感豊かでありながら、けしてくどくは無く素晴らしい。それと比べると、かなり薄味な9番だった。

全10曲(オマケの歌曲は別にして)の中、特筆すべきは第4番のソプラノ、レリ・グリストの歌唱の素晴しさだろうか。
後は、これと言うものが思いつかないが、中庸的というかあまり癖のないところは、けして欠点とはならないだろう。NYPは、マーラーがしばらく指揮をしていたオケであり、バーンスタインの前任者であるミトロプーロスもマーラーを積極的に取り上げていたそうで、オケとマーラー作品とのつながりはそこそこ深かった。勘繰ると、マーラーに対する理解がすでに出来ていたオケを生かして、バーンスタインの方がマーラーに習熟するための、いわばトレーニングになったのではないか。故にこの指揮者らしい感情移入やそれに起因する極端な抑揚や激情的な爆発がほぼ感じられ無いのではなかろうか。

とは言え、悪くないことは間違いない。時折、ちょっとバランスを失すると言うか軽く破綻する場面はあるが、録音もリマスタリングも良好で聴きやすい、良くまとまった全集と言える。加えて、10番とカップリングのイスラエルフィルとジャネット・ベイカーによる「亡き子を偲ぶ歌」は素晴らしく、プラスアルファの価値があると思う。

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