ジュリーニとシカゴ響のマーラー9番。

グラモフォン、デッカの「オリジナル」シリーズは、時々えらく安価に販売されているときがある。そうでない時の半額近いこともあり、買うには注意が必要だ。ショルティのマーラーのいくつかは、そういうタイミングで買ってきたものだが、今回は、ジュリーニがシカゴ響を振ったマーラーの交響曲第9番を買ってみた。9番の録音としては定番のひとつに挙げられているが、2枚組みになっていることもあり、これまで敬遠していたものだ。
ジュリーニの録音は、あまり持っていない。ソニーに移籍して出したシューベルトの交響曲と、ブルックナーが1枚あったか。マーラーに限ると、EMIの生誕150周年全集に入っている1番、オケが同じシカゴ響だったはずだが、あのディスクだけだ。聴き終えてマーラーと言うよりはベートーヴェンを聴いていた様な妙な感覚が残ったことを覚えているが、9番はどんなもんだろう。



第一楽章は30分を超えており、明らかに長い。そして、聴き始めると、やはりゆったりとしていて、これは時間がかかるわな、と言う印象。ゆったりとしてはいるが、単に穏やかと言う感じではなく、各パートがしっかり主張しつつ絡み合っている。ショルティとシカゴ響のマーラーのような、力強いが硬質な感触とは異なり、柔らかだが芯は強いと言う感じ。そして、同じゆっくりでもマゼールの様に耽美的ではなく、ガチャガチャしたところが適度に残してあるというか。確かにこれはなかなか凄いと、思いはじめた。
そして第二楽章、これもやはり遅め。1番のときに感じた古典派の曲をやっている様なまとまった落ち着きはなく、遊びを感じる。といっても、バルビローリ指揮ベルリンフィルのあれほどではない。
第三楽章も同様だが第二楽章よりは少し引き締まった、襟を正した雰囲気となる。そして後半、終楽章の主題が現れるあたりの美しさは目を瞠るものだ。そして終楽章、低音弦等がしっかりと響いて線が太く、しかし柔らかなので優美さは損なわれない。よく歌いよく響く豊かな9番だ。どちらかと言えばもう少しストイックで枯れたものが好みだが、これはこれで素晴らしい。

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