マゼールのベートーヴェンを聴き終えて。

年をまたいで聴いてきた、マゼールとクリーブランド管のベートーヴェン交響曲全集録音。
6番は、どうにも冗長に感じられあまり好きではないのだが、他の録音と同じく各パートの音がくっきりと出てくるのが面白く、小規模な、場面によってはカルテットを聴いているような近さが感じられて、退屈せずに聴き終えることができた。

そして、7番。冒頭から、すこしテンポを遅めにしているように感じる。やはり分離が良く、各パートがくっきりと浮かび上がってくる。あまり意識することの無い、裏で鳴っているような音がしっかりと掴めて、じっくりと曲を解剖していくかのような生々しさがある。
第二楽章は当然、そして第三楽章も落ち着いたペースは変わらない。これはおそらく、終楽章で一気に来るだろうなと思っていたら、案の定、速い。予想通りではあったが、この対比はいかにも効果的だ。いやいや、素晴らしい。

8番は夕食に手打ち蕎麦を食べに出かけたついでに、車の中で聴いた。イヤホンほど克明に聴くことは出来ないのだが、分離の良さはやはり変わらず。

全集とは別の、バイエルン放送響との「ウェリントンの勝利」を挟んで、最後に第九を。これはもともと単品で持っていたもので、リマスタリングし直したりもしていないように聴こえた。あまり印象は変わらない。
さて、全体を聴き終えて感じたこと、まずは各パートの分離が良い。おそらくパートごとにマイクをセットして入念にミキシングを施しているのだろう。マイクと楽器が近いからだろうか、特に低音弦など非常に生々しく聴こえる。しかし、弓が何かに当たる音だろうか、ピシとか、カサ、といった、雑音もよく拾っている。気になる人もいるかもしれない。
マゼールの指揮としては、特にアクの強さを感じるようなところは無かったが、出る退く、大小、強弱、緩急を自在にコントロールし、聴き応えのある仕上げを施している。4番、8番といった小ぢんまりした曲にはそれなりのゴージャスさを与え、一方で時に冗長と感じられるような5番や6番はスピードに乗せてだれることが無い。そう、全般に速い場面のドライヴ感と言うか、こちらを引き込んで引っ張っていく力が印象的だった。ウィーンやバイエルンでのゆったりとした構えで豊穣な響きを引き出すスタイル以前の、才気が有り余って迸っていた時期の真骨頂と言うべきか。

コメント

人気の投稿