ローレンス・ブロックの「獣たちの墓」。

続々と読み続けているマット・スカダーシリーズ、ずいぶんたくさん読んだ気がしたが、まだ1/3ほどストックがある。


"倒錯三部作"のトリを飾る「獣たちの墓」を読み終えた。
「墓場への切符」:暴力で娼婦を服従させる異常者。
「倒錯の舞踏」:少年を狙って性行為の後殺害する夫婦。
「獣たちの墓」:女性を標的に、乳房を切り取るなど肉体の損傷に異常な執着を見せる殺人犯。
これら性的倒錯者、異常者を相手に、日々悪くなっていく世の中を嘆きながらも、スカダーは悪を追い詰めていく。とはいえ、自殺に見せかけて殺すことで幕を引いたり、常習的な犯罪者であるミック・バルーと協力して敵に対峙したり、依頼者の側が犯罪者であったりと、スカダーの片の付け方は、これまでとは変化している(ワンパターンに陥っていないのが素晴らしいところだ)。

しかも、前時代的な足で調べるだけが能のスカダーにとって、現代の犯罪の捜査は容易ではない。そのためにブロックは、昔なじみの情報屋ダニーボーイ・ベルやジョー・ダーキン刑事に加え、天才的な似顔絵を描く警官ガリンデス、ストリート・キッドのTJといった頼もしい協力者を投入していった。さらにTJが天才的なハッカーコンビ、コングズまで連れてきたことで、複雑化の一途を辿る現代社会に適応した捜査が可能になった。

同時に昔なじみの娼婦エレインとの関係がすこしづつ進展し、ミック・バルーとの友情も静かに深まり、パリス・グリーンのバーテンダーのゲーリー、弁護士ドルー・キャプランなど、脇の人物も固まってきた。そして何より、スカダーの禁酒を支え続けている助言者ジム・フェイバーの存在も大きい。スカダーと、彼を取り巻く世界が、しっかりと定まってきた感じだ。

残りは5冊、もちろん全て既読ではあるが、スカダーの歩みを辿っていくとしよう。

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