新日本フィル、岸和田公演を聴きに。

何年ぶりかはっきりわからないほど久々にコンサート会場へ出向いた。クラシックだと、大阪音大へ前橋汀子さんの無伴奏の全曲演奏会に行って以来だから5年ぐらいは経っているだろうか、さらにオケだけに限るともっと遠い昔で十数年ぶりか。ロック系を含めても大阪厚生年金会館が健在だった頃のジェフ・ベックのライブ以来という気がする。まあもうよくわからないから、そんなことはどうでもええわ。
オケは新日本フィルハーモニー、指揮は井上道義さん、録音は持っていないがTVで見たり書いたものを読ませていただいて面白くて好きな指揮者だ。ピアノソロは小川典子さん。そして演目は、ブラームスの交響曲第1番、そして、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。メジャーな曲が揃っていて、人気になりそうなプログラムだ。
会場は岸和田港そばの「浪切ホール」。演芸をやったり演歌をやったり、たまにはこうしてクラシックも、と、いかにも地方都市のホールらしい。
駐車場が込んでいて開演ぎりぎりではないにしろまもなくと言うところで着席。まずはヴェルディの椿姫第3幕への前奏曲、これはさらりと終わらせて、マエストロは下がることなくそのままソリストに声をかけ、小川さん登場、ラフマニノフへ。
冒頭の重く峻厳な和音からオケが乗ってくる所で、ああ、これはやっぱり生で聴くと違うな、と。ソロは力強いが、余裕がある感じでは無く、全力でオケと対峙している様。特に終楽章、入れ替わり立ち代り絡んでくるオケにひとりで張り合っているような、これは作曲家自身が超絶的なピアニストであったからだろうが、この激しさは生でこそ聴けるものだろう。ただ美麗であったりセンチメンタルなものではないラフマニノフが楽しめたのは大きな収穫だった。
休憩を挟んでメインのブラームス、これはもう、ティンパニに注目。弦の緊張感も高くてよい。マエストロは静と動、細かく、大きく、抑揚の効いた指揮で、オケからしっかりと音を引き出していく。2楽章、3楽章、いつもの通勤電車の中ではうとうとするところも、オケがよく鳴っているので耳を離せない。とはいえ、ホールの音響特性によるものか、全体にちょっとガチャガチャした感じではあった。弦は整っていい感じなのだが、管と絡むと散漫になると言うか。音が硬い感じで溶けてまとまらないと言うか。もっとも、終楽章ではきれいにまとまってきて、圧倒的な大団円を迎えた。もちろん、クライマックスでもティンパニが大活躍だ。
マエストロは、序盤でNHKの「カーネーション」をネタにつかみの小話をかましてくれたかと思えば、アンコールの前にはあの3月11日のこと、公演を支援するKEIRINが被災地の子供たちに楽器を届けるための寄付を募っていること、東京はしゅんとしているけど大阪も京都も金沢も変わりなく元気で、それでいいんです、消費してくださいと。そして、何より希望と言うものは必ずあるのだということを語っておられた。ああ、なるほどブラームスの1番、あの見事なクライマックスは希望を感じさせてくれるなと、得心した。
アンコールはブラームスのワルツ。優しい音だった。
追記:久々の生音なので、良く聴こえた面はあるだろうが、なによりティンパニ、大太鼓の音など、低音の通りが違う。単にボリュームの問題ではなく、他の音を潜り抜けてこちらに届くと言うか。低音は志向性が低いので理屈としてはおかしなことを言っているわけだが。

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