ペーター・レーゼルのラフマニノフ。

新日本フィルハーモニーの岸和田公園を聴きに行くことになった。指揮は井上道義さん。ピアノソロは小川典子さんで、失礼ながらよく存じ上げないがプロフィールを見ると世界を飛び回っていてすごい活躍ぶりで不明を恥じねばならん感じ。そして演目は、ヴェルディの前奏曲からラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、ブラームスの交響曲第1番というもの。
ブラームスの1番は、常時DAPに入れっぱなしで、定位置をキープしている。実際、ちょくちょく聴く。サヴァリッシュ指揮の録音に満足しており、あれこれ聴こうとしないので、入れ替えることが無い。しかし、ラフマニノフの方は、あまり持ち出して聴くことが無い。持っている録音もわずか2種類だが、それは低評価と言うわけではない。そんな曲は我が家にはたくさんある。タコさんの5番やマーラーの9番など、あれこれ買い求める方が珍しい。
そんなわずか2種類のうちひとつは、アンドレイ・ガヴリーロフとムーティ指揮フィラデルフィア管のもの。もうひとつがペーター・レーゼルと先ごろ逝去されたクルト・ザンデルリング指揮ベルリン交響楽団によるもの。レーゼル&ザンデルリングの方は、かつてArs Vivendiレーベルから1番とのカップリングで出ていたディスクで、同じコンビ、レーベルの3、4番のセットも一緒に、20年ぐらい前に買った覚えがある。それ以降、別につまらない曲だとかそんな風に思っているわけではないのだが、ガヴリーロフ盤以外に買い足すことなく、何となく今日まで来た。
「のだめ」で2番が流行ったときも、テーマソングに引用されていたのを「ああ、そういう風に使いやすいよね、ラフマニノフは」などと思ったぐらいで、あらためて聴き直したりもしなかった。かと言ってたまには聴くので、けして嫌いではない。なんだろう。甘くて、ポピュラーミュージック的というか映画音楽みたいだからか、いや、それならショスタコーヴィチだって戦争映画とかSFものっぽいわけで。交響曲の2番はちょっと前に激しく聴きたくなって、最近はしばしば聴くようになっており、ラフマニノフそのものが駄目なわけでもないし、あっちが甘けりゃこっちも甘いしで、何故なんだか本当によくわからない。
とにかくそんな感じで久しくちゃんと聴いていなかったので、コンサートに行く前に、聴いておくことにした。



まずガヴリーロフの方を聴いたら、出だしのピアノは兎も角そのあとに被さってくる弦が妙にテンポが速くて情緒に欠ける。豪腕快速のガヴリーロフに張り合おうとしたのかは定かでないが、久々に聴いてこれは違うなと。で、1楽章を聴き終わることなく、レーゼルの録音に。何となく抑制された感じで始まり、オケもしぶい味わいで、これはいい。ソロもオケも、怜悧と言うか、沈着と言うか。だからといって強さや勢いが無いわけではなく、速くなる所は速くなるし、強奏はしっかりと強い。終楽章など堂々とした押し出しの中にエキゾティックな土着性も滲んでおり、ハリウッド的な美麗さとロシアの血が絡み合っているようだ。録音は1980年か81年、初期のデジタル録音で、ディスクのリリースは89年だからその時点でリマスタリングで改善されているのかもしれないが、重厚だがクリアで気持ちよい。他の番号も聴いておこう。

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