マゼールのマーラー、6番、1番、4番。

まず6番。冒頭、それほど違和感のない、というか、そんなに遅くないテンポで始まる。しかし、ショルティのショスタコーヴィチでも感じたような、ウィーンフィルらしさというべきか、なまめかしさが漂っていて、如何せん優美に聴こえる。したがって、アルマのテーマが流れても、その転換の妙が目立たない。
第2楽章に置かれたスケルツォも、やや遅めであることと相俟って、追い立てられるような感じが無い。さすがに続くアンダンテの柔らかな美しさは極上のものだが。
終楽章はダイナミックで、さすがにマゼールだなと思わせるが、それ以上に、全体にウィーンフィルらしさ(と自分が感じている艶や響きの柔らかさ、高音の線の細さなど)が支配的で、あまり悲劇的では無いように感じた。

1番でも概ね同様の傾向。流石に第2楽章の舞曲は素晴らしいのだが、第3楽章はうまくこなれすぎて卑俗な歌謡性が漂わず、出来すぎな印象。ジュリーニとシカゴ響の録音ほどではないが、マーラーにしてはうまくまとまりすぎているような。クーベリックとウィーンフィルの古い録音では、あまりこうした感じは無かったのだが、録音のおかげで分離が良く音場が立体的なために、オケとホールの特徴が前面に出てしまうのだろうか、などと勝手な推測をしている。

4番はダイナミックレンジを広く取っていて弱音部分が聞き取りにくい録音。これは他の録音でも時々感じることなので、4番と言う曲そのものがそうなのだろう。とはいえ基本的にふくよかな音で、可憐なこの曲を、野太くなったりせぬよう、美質を損なわぬままスケールアップして鳴らしている感じで良い。
終楽章はやはりゆったりしたテンポで、全般にこの曲においてはそれが成功しているが、ソプラノのバトルは声の質によるものなのか、オケに対してやや非力に思えた。

ゆったり目のテンポと柔らかなオケの音とが、功罪相半ばと言ったところ。2番と4番、5番、特に5番は良い方に転んでいたと思う。残るは9番と10番だが、果たしてどうか。

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