ブロックのマット・スカダーシリーズ再読開始。

「殺し屋」シリーズの邦訳が完結してしまい、ちょうど未読本が尽きたので、スカダーシリーズをいちから読み返すことにした。二見ミステリ文庫で13冊、ハヤカワミステリ文庫で2冊が既刊。日本での出版の順番と、書かれた順番とは差異があるが、今回は、書かれた順に読んで行く。



さて、第一作は「過去からの弔鐘」。1987年に出た文庫だから、もう絶版だろうか。自分がスカダーものを読むようになったのは、90年代に入ってからで、最初に手にとったのは当時の代表作だった5作目の「八百万の死にざま」だったから、この作品はだいぶ後になって、遡って読んだ。
本国では、この作品から第三作目までは最初から安価なペーパーバック用に書かれたそうで、初期のスカダーは恐らく次々に生み出されては消えて行ったであろう多くのプライベート・アイたちの一人に過ぎなかったようだ。しかし、ローレンス・ブロックの落着いた渋みのある文章、それ以上に暗い色を帯びたスカダーの存在は独特で、4作目からは格が上がり、やがて彼らはアメリカの探偵小説界を代表する主人公と作家になった。
そんなことを考えながら偉大なシリーズの小さな第一歩を読み始める。いかにもハードボイルドといった感じの修辞が連なり、宍戸錠が口にしそうな気障な台詞が並び、若書きだな、と思わせる。
近作のどこか枯れた味わいに慣れてしまった身には、少し違和感があるが、とにかく読み進めよう。先は長い。ニューヨークを舞台にしたこのアル中の元警官の物語は、この後30年以上にわたって書き続けられているのだから。

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