クレンペラーのマーラー、9番。

演奏時間は、28'15"/18'42"/15'19"/24'24"/計86分40秒。
ノイマンとチェコフィルの最後の録音が26'16"/15'06"/13'07"/22'39"/計78分08秒なので、各楽章満遍なく+2分ほど遅め、トータルで8分強長い。バーンスタインですらCD1枚に収めていた1960年代で、80分を超えた録音と言うのは、余り無いのではないだろうか。
と言っても他に類を見ない長さの7番に比べれば驚くほどではないのだが、ごつごつした迫力のある演奏のためか、実際の数字以上に、長くと言うよりはむしろ大きく感じられた。
7番でも感じたように、楽譜にある音を、しっかりと引っ張り出して力強く提示する。普通なら裏で鳴っていて意識しないとはっきりとは聴こえない旋律が、次々と、耳に打ち込まれるように響く。EMIのけしてクリアとは言えない録音のおかげか、そこに分析的な繊細さは無い。かといって、クレンペラーは陶酔しているようには思えない。爆演とか燃焼とか情念とかとは異なるような気がする。険しい顔で奏者たちから音をわしづかみにして引きちぎっては客席にぶちまけているようだ。
しかしながら、第三楽章終盤で、終楽章の主題が予告されるあたりから、不意に世界はこの上もなく美しく整理整頓されはじめ、終楽章は普通よりは演奏が「強い」とは思えるが、奇怪でも圧迫的でもなく、やはりマーラーの、9番の、第四楽章だなと思える美しさで進んでいく。
しょっちゅう聴くものでは無いように思うし、癒しなど求めていると打ちのめされそうだが、マーラーのガチャガチャした部分を味わいたいときにはこれしかないのではあるまいか。
ただし、やはり太鼓をはじめ低音の録音は悪い。どろどろに溶けている。良いリマスタリングのものを探すべきかもしれない。



「Art」処理のこのあたりだと、値段も手頃で音も良くなっているのではないだろうか。

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