「冬を怖れた女」と「1ドル銀貨の遺言」。

ローレンス・ブロックの「マット・スカダー」シリーズから、初期3部作の、2作目と3作目を読了。



この時期の作品は文庫で300ページ以下と薄く、わりとすぐに読み終えられる。

まずは2作目の「冬を怖れた女」。
内部告発で時の人となった刑事の依頼で、彼を訴えている娼婦の裏を探ることになったスカダー。しかし、女は殺され、依頼人は逮捕された。自分たちを裏切り告発しようとした依頼人が有罪になろうと、警察官たちは気にも留めない。すなわち、まともに捜査は行われない。依頼人はあらためてスカダーに自分の無実を証明してくれるよう頼み、スカダーは調査に乗り出す。
少し拙速と感じる部分は無いでもないが、スカダーの性格の複雑さと言うか、周囲に流されない独自の価値基準に従った生き方が形作られていく過程が見える。酒の量も増えているようだ。

そして3作目は「1ドル銀貨の遺言」。往年のマカロニウエスタンの名作、「荒野の1ドル銀貨」を思い出すのは40代以上、あるいはそれ以上か。
それはともかく、死んだ情報屋のゆすりのネタを相続し、自分が殺されたらその犯人を見つけてくれと頼まれると言う導入で、まずブロックの発想の豊かさに恐れ入る。そしてスカダーはますます酒に溺れ、まさにアル中、依存症へと落ちていく。相変わらず大団円のカタルシスはそれほどないというか、あっても重いもの、暗いものが残る。もちろん、そこが良いのだが。

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