ローレンス・ブロックの「殺し屋」。

ローレンス・ブロックの代表作群のひとつ、殺し屋ケラーシリーズの完結作が、この9月下旬に発売される。この前の作品が出たのがもう4年も前のことで、流れをつかみなおすために第1作から読み返していた。



第1作「殺し屋」。連作短編集。主人公はジョン・ポール・ケラー。ニューヨーク在住の殺し屋。仕事はホワイト・プレーンズという町に住む男から受ける。依頼があるとドットという女性が電話をかけてきて、ケラーはグランドセントラル駅から電車に乗ってホワイト・プレーンズの家に出向き、ドットが作ってくれるアイスティーを飲みながら駄弁ったりしたあと、二階に上がって男から依頼の内容を聞く。
殺しの手口は色々で、現地で相手を観察してから考えてみたり。だからといって毎度毎度奇抜な殺人手法で読者の気を惹こうとか、そういう小説ではない。ケラーはあくまで淡々と職業人として、その件に最もふさわしいであろう方法で依頼を達成していくだけだ。その描写も穏やかでけしてエキサイティングにもおどろおどろしくもならない。人格から何かが欠落している様でもあり、何かを超越してしまっているようでもある。
どんなにゆがんだものであれ、その生き方は手袋のように彼にぴたりと合った生き方だった。(「ケラーの責任」)
という、一人の殺し屋の生き方を読みながら、読者は自身の生き方を見つめることになる。そして、それが手袋のようにぴたりと合っているか、ふと考えることもあるだろう。



第2作「殺しのリスト」。こちらは長編。といっても、ひとつの仕事を掘り下げるのではなく、次々に依頼を片付けつつ、物語は進んでいく。



第3作「殺しのパレード」。連作短編集に戻っている。

次でケラーとはお別れかと思うと少し寂しい。泥棒バーニーシリーズはハヤカワが文庫化を止めてしまってずいぶん経ち、いったいどうなっているのか、おそらくもう出てこないのだろうとあきらめている。マット・スカダーシリーズは二見書房から完結作となる「すべては死に行く」がハードカヴァーで出ており、そのうち文庫化してくれるだろうが、そっちもそれで終わりだろうから、いよいよブロックとの付き合いがなくなってしまうのか、あるいは新しい何かが出てくるだろうか。

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