小林旭の無国籍映画に関するメモ(11)。

大暴れ風来坊(1960.11.16)

 
舞台:愛媛県松山
野村浩次の素性・目的:潜入捜査にやってきたらしい刑事(?)。もともと目的があったのか、偶々事件に出くわしたのかは不明。
錠の役どころ:「十字架の政」または「ズーズー弁の政」という流れ者の殺し屋。
ルリ子の役どころ:運送会社社長の娘。金策に駆けずり回る。
悪の黒幕:関西の実業家、大田黒(藤村有弘)。遠隔操作で現地の観光会社を操り悪事を働く。
黒幕の目的: 運送会社の土地乗っ取り、レジャーランド建設を企む。
寸評:
「流れ者」シリーズなのにタイトルに「風来坊」とあり、銀座を舞台にした「東京の暴れん坊」の続編に「でかんしょ風来坊」というのがあるせいでどうにも紛らわしい。
しかし、内容は大変すばらしいもので、どっちがどっちだか分からなくなりかねない「渡り鳥」と「流れ者」両シリーズの差別化ポイントを確立できている。
・旭はただ流れてきたわけでなく、第一作「海から来た流れ者」と同様、正義を行う目的と立場(麻薬取締官だったはずが刑事になっているが)を備えている。
・土地の魅力を臆面もなく語り「住みたい」と言い出すなど、旭の人物像が明らかに孤高の渡り鳥ではない。陰の「渡り鳥」と陽の「流れ者」と言うと大袈裟すぎるか。
・宍戸錠が前作で生み出したエキセントリックな人物造形をさらに押し進め、コメディリリーフ的なポジションまで担っている。
・宍戸錠が逮捕されずに終わる(これは前作も同様だが、白木マリと身を落ち着けると言っているあたり、シリーズ卒業を踏まえての演出だろうか?)。
・旭は自分の正体をルリ子に明かし、挨拶をして去っていく。
といったところ。流れ者に職業があるというのも変な話だが、それによって一本筋が通っている。また、ミニチュアを使ったちゃちな特撮にはちょっと困るが、ルリ子サイドが金を借りようと頼りにしていた相手が真の黒幕だったりと、従前の作品群より少し練りこまれている点も評価できる。

風に逆らう流れ者(1961.4.9)

 
舞台:愛知県豊橋市
野村浩次の素性・目的:前作で刑事だったのもつかの間、正体は不明に。火薬製造会社の技師である友人「瀬沼」を訪ねて来た。
ライバルの役どころ:神山繁。流れ者として黒幕に雇われるが、実は刑事。
ルリ子の役どころ:造船会社社長の娘で瀬沼の妹。兄嫁は悪の黒幕の妹で、兄とはすでに別れているため、その子供を引き取って世話をしている。
悪の黒幕:火薬製造会社の社長、塩沢(山内明)。
黒幕の目的: 造船会社のある島を奪い強力な火薬の密造場にするつもり。また、ルリ子のことも狙っている。
寸評:
宍戸錠は離脱。ライバル的な流れ者としては神山繁を起用しているが、錠のようなアクが無いというか真面目そうに見えてしまうあたりでミスキャストではないかと思えてしまう。藤村有弘も登場するがあまり活躍の場面がなく、ライバル役を務めた「大海原を行く渡り鳥」がまずまずうまくできているだけに、少し勿体無い気がする。むしろ、藤村の恋人で踊り子でもあるが拳銃の達人で度胸も満点、旭のピンチを救ったりもする白木マリの奮闘が目立つ。
もともと瀬沼の父親が島で見つけた(戦時中の?)火薬を塩沢に売って金にしていたり、金のために娘を塩沢に渡そうとしたりと単純な善人と悪人との関係ではなく、その父親が最後には塩沢を撃つという展開など、ドラマには厚みを増した感があるだけに、なかなか惜しい作品だ。

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