小林旭の無国籍映画に関するメモ(9)。

海から来た流れ者(1960.2.28)


舞台:伊豆大島
野村浩次の素性・目的:元麻薬取締官。横浜港で取り逃がした相手が落としていった煙草入れの中に大島への連絡船の切符があったことから、現地へ。取締官という立場では自由に動けないと考え、辞職してからやってきた様子。
錠の役どころ:黒幕に使われているキャバレーの支配人「神戸」。今回は比較的単純な悪役であり、ライバル的な存在としては葉山良治(実は刑事)が出演している。
ルリ子の役どころ:温泉掘削をしている土建屋「藤徳組」の娘。
悪の黒幕:東京の実業家、津久田(二本柳寛)。
黒幕の目的: 藤徳組の土地を乗っ取り、麻薬密輸の中継基地建設を目論む。
寸評:
「渡り鳥」シリーズ二作公開後にスタートした、「流れ者」シリーズ第一作。旭、錠、ルリ子と揃っているが、錠は黒幕の番頭格として最後まで敵対する存在で、裏切って旭と共闘したりはしない。「渡り鳥」シリーズとの差別化を図ったのだろうかと思うが、自作以降では錠は敵対~共闘という図式に収まるので、試行錯誤している段階だったのかもしれない。
このほか、旭が「元」ではあるが(そして何故かシリーズ四作目では現職に戻っている)、捜査を目的に動いていること、自身の行動についてルリ子に理解を求めようと説得する場面があること、ラストも、ルリ子に自分が「麻薬取締官だったんだ(だったんだと過去形なのでやはり辞めたままなのだろう)」と打ち明け、その後二人乗りの馬で山を下って行く場面で終るなど、あれこれと「渡り鳥」とは違う「流れ者」像の創造に苦心していると感じられる。

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