小林旭の無国籍映画に関するメモ(3)。

口笛が流れる港町(1960.1.3)


舞台:宮崎県えびの高原
滝伸次の素性・目的:不明
錠の役どころ:「太刀岡のクロ」という流れ者。殺しなどを請け負う。この地で探り出したいことがある。
ルリ子の役どころ:現地の鉱山の権利を相続している娘。駄目な兄がトラブルメイカー。
悪の黒幕:キャバレー経営者の的場(山内賢)。鉱山の先代に引き立ててもらったが、「渡り者」(流れ者と同義か)であったため娘への求婚を許されなかった。それを今も恨んでいる。
黒幕の目的: 鉱山を入手し、第二次大戦中、鉱山に隠された宝石などの物資を得ること。
寸評:
岩ばかりの山道を一体の人馬が進んでくる。道端の大岩の上には、怪しい風体の男が座っている。二言三言、言葉を交わし、馬に乗った男が先へ進もうとすると、岩の上の男は拳銃を取り出し、後ろから、馬に乗った男がブーツにさしていた乗馬用の鞭を撃ち飛ばした。その刹那、馬上の男もすばやく振り向き、手にした拳銃で相手の帽子を撃ち飛ばす。
一体どこの世界の出来事か。荒唐無稽、しかし、この上なく決まったそんな場面から、この映画は始まる。
しかし、妙な作品だ。タイトルに反して、ほとんど高原が舞台。確かに港で口笛が流れるシーンがあるものの、とってつけた感すら漂う。というか、宮崎県出身の家内にも、えびの高原からいったいどこの港へ移動すると言うのか見当がつかないというくらいに、地理的にはわけのわからないことになっている。地図で見てみると、高原は南九州の真ん中あたりに位置しており、一番近そうな海は鹿児島湾か。港町へ出かけるだけでも当事の交通事情では大変なことだったのではないかと思えるし、ストーリーにその必然性がない。本当にわけが分からない。
また、そればかりでなく、主題歌が他のシリーズと異なる点(ヒット曲「北帰行」から生まれた『渡り鳥北へ帰る』もあるが)、前作の設定(滝が神戸の元刑事)や展開(滝が最後に次は佐渡へでも行こうかと語っている)が全く反映されていないなど、もともとはシリーズ第2弾として考えられていなかったのではないかと思える節もある。とはいえ役名は「滝伸次」であり、作中で「ギターを持った渡り鳥」を歌うシーンがあるので、出来上がりとしてはシリーズ作品の体をなしているのだが、違和感は拭えない。
それはともかく、冒頭の旭と錠との掛け合いからして、これぞ無国籍とも言うべき吹っ切れぶりを見せており、実質的にはこの作品が「渡り鳥」「流れ者」に代表される「日活無国籍アクション」の雛形となったのではないかと感じる。革のジャケットに白いスカーフという旭の姿はこの上なく美しく、冒頭のジョーとのやり取りのあと、左手で操る拳銃を右の上腕のポケットに収めるというシークエンスなど、なかなかにしびれる。
なお、えびの高原では実際に硫黄の採掘が行われていたので、作中に登場する鉱山はそのためのものだろうか。

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