小林旭の無国籍映画に関するメモ(1)。

小林旭の「渡り鳥」「流れ者」シリーズに関するメモ。
まず、これらの作品群の全体像を眺める。 1959年8月公開の「南国土佐を後にして」が、これらシリーズの原型であるが、後の作品群とは類型化できない部分が多い。共通する点としては、

・主人公はダイスやカード捌きが得意で、拳銃の扱いも上手い。
・日本の地方都市、観光地が舞台となり、現地の祭礼や産業などが紹介される「観光映画」的側面を持つ。

といったところぐらいだろうか。 そこから、10月公開の「ギターを持った渡り鳥」で主人公像がブラッシュアップされ、以後、脇の登場人物も含め作品の骨格が定型化されていく。

・主人公は前職または現職が警察関係者であり、前提として「正義」の側に立つ。
・訪れた土地では悪漢が私利私欲のために地上げなどを企み、善良な人々を苦しめている。
・悪漢の側の関係者として宍戸錠が登場し、主人公と敵対するが、最終的には悪漢を裏切る。
・現地でヒロイン浅丘ルリ子と出会い、ほのかな恋愛感情が生じるが、それは実らない。
・最終的に悪漢は倒され、錠は自首し、旭は土地を去っていく。ルリ子は悲しくもそれを見送る。

作品成功のポイントはいくつもあろうが、やはり宍戸錠の存在が大きいと感じる。 小林旭と宍戸錠との共演は、1959年9月の「銀座旋風児」から。「ギターを持った渡り鳥」の直前であるが、ここでの錠は情報屋の役であり、さほど目立たない。「ギターを持った渡り鳥」でまずまずの存在感を示し、「渡り鳥」第2弾の「口笛が流れる港町」で、西部劇のガンマンと現代的なギャングをミックスした独特の悪役像を確立する。旭の側も、馬に乗り、歌ってギターを弾いて拳銃をぶっ放してという現実離れしたヒーローになりきってしまう。日活アクション、無国籍映画の大躍進の始まりだ。
1960年の錠のスケジュールもすさまじい。「口笛が流れる港町」を皮切りに、赤木圭一郎との「拳銃無頼帖」シリーズがスタートし、続いて旭との「流れ者」シリーズまで始まってしまう。一方で「銀座旋風児」シリーズからは離脱。結果、旭と7本、赤木と4本共演し、その他の出演作は石原裕次郎の「鉄火場の風」1本のみとなっている。しかし、1961年に赤木が事故死。錠は単独での主演作を撮るようになり、旭との共演は困難になって行く。錠の代わりは藤村有広、神山繁、錠の実弟である郷鍈治が勤めた。そうした中には「大海原を行く渡り鳥」のように、結構面白い作品もあったが、残念ながら錠の穴は埋まらない。 こうしてみると、日活無国籍アクションの真の黄金時代は、1959年の秋から1961年の初頭までという、ほんのわずかな間だったのだ。
*赤木圭一郎死去(1961.2.14)
*宍戸錠主演作「ろくでなし稼業」公開(1961.3.12)

渡り鳥シリーズ
ギターを持った渡り鳥(1959.10.11)
口笛が流れる港町(1960.1.3)
渡り鳥いつまた帰る(1960.4.23)
赤い夕陽の渡り鳥(1960.6.29)
大草原の渡り鳥(1960.10.2)
波涛を越える渡り鳥(1961.1.3)
大海原を行く渡り鳥(1961.4.29)
北帰行より 渡り鳥北へ帰る(1962.1.3)
*「渡り鳥故郷へ帰る(1962.8.12)」はシリーズ外の作品。

流れ者シリーズ
海から来た流れ者(1960.2.28)
海を渡る波止場の風(1960.5.28)
南海の狼煙(1960.9.3)
大暴れ風来坊(1960.11.16)
風に逆らう流れ者(1961.4.9)

年別主要主演作品
1959年(13本)
○南国土佐を後にして(1959.8.2)
[銀]銀座旋風児(1959.9.20)
●ギターを持った渡り鳥(1959.10.11)
[銀]銀座旋風児 黒幕は誰だ(1959.12.6)
1960年(12本)
●口笛が流れる港町(1960.1.3)
■海から来た流れ者(1960.2.28)
[銀]銀座旋風児 目撃者は彼奴だ(1960.3.26)
●渡り鳥いつまた帰る(1960.4.23)
■海を渡る波止場の風(1960.5.28)
●赤い夕陽の渡り鳥(1960.6.29)
[坊]東京の暴れん坊(1960.7.29)
■南海の狼煙(1960.9.3)
●大草原の渡り鳥(1960.10.2)
■大暴れ風来坊(1960.11.16)
[空]都会の空の用心棒(1960.12.7)
1961年(12本)
●波涛を越える渡り鳥(1961.1.3)
[銀]銀座旋風児 嵐が俺を呼んでいる(1961.2.25)
[坊]でかんしょ風来坊(1961.3.19)
■風に逆らう流れ者(1961.4.9)
●大海原を行く渡り鳥(1961.4.29)
[空]都会の空の非常線(1961.6.18)
1962年(10本)
●渡り鳥北へ帰る(1962.1.3)
[坊]夢がいっぱい暴れん坊(1962.4.1)
[銀]二階堂卓也銀座無頼帖 帰ってきた旋風児(1962.6.10)
○渡り鳥故郷へ帰る(1962.8.12)
1963年(8本)
[坊]銀座の次郎長(1963.6.2)
[銀]風が呼んでる旋風児 銀座無頼帖(1963.8.31)
[坊]銀座の次郎長 天下の一大事(1963.9.29)
●渡り鳥シリーズ(滝伸次)
○渡り鳥シリーズと関係のある作品
■流れ者シリーズ(野村浩次)
[銀]銀座旋風児シリーズ(二階堂卓也)
[坊]暴れん坊シリーズ(清水次郎)
[空]ヘリコプターもの(速水八郎)

宍戸錠出演作
[銀]銀座旋風児(1959.9.20)
●ギターを持った渡り鳥(1959.10.11)
[銀]銀座旋風児 黒幕は誰だ(1959.12.6)
{他}昼下りの暴力<川地民夫>(1959.12.16)
●口笛が流れる港町(1960.1.3)
{他}鉄火場の風<石原裕次郎>(1960.1.15)
{拳}拳銃無頼帖 抜き射ちの竜(1960.2.14)
■海から来た流れ者(1960.2.28)
●渡り鳥いつまた帰る(1960.4.23)
{拳}拳銃無頼帖 電光石火の男(1960.5.14)
■海を渡る波止場の風(1960.5.28)
●赤い夕陽の渡り鳥(1960.6.29)
{拳}拳銃無頼帖 不敵に笑う男(1960.8.6)
■南海の狼煙(1960.9.3)
●大草原の渡り鳥(1960.10.2)
■大暴れ風来坊(1960.11.16)
{拳}拳銃無頼帖 明日なき男(1960.12.3)
●波涛を越える渡り鳥(1961.1.3)
{共}太平洋のかつぎ屋(1961.1.27)

●渡り鳥シリーズ(滝伸次)
■流れ者シリーズ(野村浩次)
[銀]銀座旋風児シリーズ(二階堂卓也)
{共}シリーズ外の小林旭との共演作
{拳}赤木圭一郎の拳銃無頼帖シリーズ
{他}小林、赤木以外との共演作

参考:日本映画データベース

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