最近の通勤の友。

坂口安吾もひと段落して。


自転車ロードレースを題材にしたミステリで、数年前にかなりの評判になっていたが、読まずにいたもの。なかなかに面白く、読者に何かと説明が必要なマイナースポーツを、なんとか理解させる手腕は素晴らしいと思うが、ロードレースの競技者である主人公自身は当然のこととして理解していて説明など不要なことを、主人公の一人称で説明させねばならないのはしんどかっただろう。
読み終えてから振り返ってみると、何故その人物は、あるいはあの人物も、そこまでせねばならなかったのかとか、どうも納得がいかないところがあれこれ湧いてくる。続きは劇場版で、という昨今のテレビドラマの結末にも似た「腑に落ちなさ」があり、どうやら時間軸を移動させた続編だか関連作品だかがあるようで、うーん、そういう商売なのか、と思わずにいられない。
また、通勤の一往復とちょっとで読み終えてしまい、200ページ無いぐらいの分量かなと思ってみたらノンブルでは300ページ弱あって驚いた。改行が多く、実の文章量は海外ものの翻訳ミステリーに比べると2/3ぐらいなのだろう。


ウィンズロウの文庫新刊に飛びついた。やっぱり面白い。サンディエゴが舞台で、この土地の背景を理解しておかねばよく判らない所があるため、そのあたりの説明が割りとしっかりとあって、ちょっと説明的に過ぎると感じてしまう部分があるが、人物設定もプロットもそれを補って余りある。主人公は屈折しているが、仲間たちも其々に翳を帯びている。その他の登場人物たちも然り。人は単純な生き物ではない。


やはりウィンズロウはすごいなと言うことで、懐かしい作品を読み返し始めた。今手元にある文庫本は、紛失したと勘違いした妻が買ってきた2冊目で、第15版、1997年のもの。しかし初版が本屋で平積みになっていたのを買った記憶があるので、その年1993年がウィンズロウとの出会いだったようだ。しょっちゅう刊行されるわけではないが、18年、読み続けていることになる。読み返してもやっぱり面白い。ニール・ケアリーは生き生きと、まさに生きている。これほど新鮮で躍動感のある(そしてただ単なるヒーローではなく弱点も屈託も兼ね備えた)主人公にはなかなかお目にかかれない。人物造形の巧みさこそ、ウィンズロウの真骨頂ではなかろうか。

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