フリーマントルを読む。

フリーマントルの名前、スパイものの大家であることは昔から知ってはいたが、何故かまったく読まずにいた。なんとなく重そう、地味そう、と、全く読んでもいないのにそういうイメージを抱いていた。それに、スパイものを読まないわけではないがハードボイルド・ノヴェルの延長でぎりぎり守備範囲に入れている程度であるから、掘り下げたり広げたりする優先順位が低かった。
とはいえ、読み続けている作家--今だとローレンス・ブロック、ドン・ウィンズロウ、イアン・ランキン、ケン・ブルーエン、S・J・ローザンあたりか--の新刊(文庫としての、だ)がなかなか出てこないので、何か開拓してみようかと思い、何とはなしに、「消されかけた男」に手を出してみた。



舞台も人物も薄汚いし臭そうだし、地味だし、しかしスリリングで、緊張感が高くかつ持続する。かといって重すぎず、すいすいと読み進められる。何しろ秘密のアイテムや腕っ節は全く無い中年男が、経験と知恵で危機をすり抜け生き延びていく様が面白いし、油断をするとこちらも騙されかねないので集中して読まずにいられない。想像していたよりも良かった。

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