最近の通勤の供。


書店の店頭、海外ものの文庫が並んでいる棚で、何となく目に付いて、まったく予備知識がなかったが直感的に手に取り、買って帰った。
上下2巻、といってもそれほどのボリュームではない。邦題は007シリーズの「私を愛したスパイ」のもじりなのだと思うが、さらに遡ると本元は「寒い国から帰ってきたスパイ」なのだろうか。
設定に由来するそこはかとなく惚けたところから、一転スピーディーなアクションシーンが展開され、また調子が落ち着いて、また加速して、あるいはひっくり返って、と、飽きさせることなく引っ張ってくれる。一部、日本人としては苦い気持ちになる部分がある(少なくとも私自身は、だが)けれども、その世界のことを知らずには書けないだろうなと思わせるリアリティにも満ちた、スパイアクションの秀作ではなかろうか(玄人にしか書けないことが書かれていて、それがわかるかどうかで読者自身が玄人であるかどうかがわかるよ、てなことを、阿佐田哲也の麻雀小説について、五味康祐が記していたような記憶がある。と言っても、私はスパイの世界の玄人でもなんでもない)。他の作品も読んでみたくなる作家だ。


引き続き鱒二。ちと重いテーマなので子どものころから読まずに来たのだが、この際、読んでしまえ、と。

コメント

人気の投稿