プロコフィエフの全集から7番を。

プロコフィエフの交響曲第7番は、単独のCDとしては、あまり販売されていない。全集か、全集の分売がわずかにあるぐらいだ。やはり、5番、続いて1番、あるいはバレエ関連の作品というのが、代表作とみなされ、録音されるのだろう。1番、5番、ロメオとジュリエット、ヴァイオリン協奏曲2曲、ピアノ協奏曲5曲など聴いてきて、TVで録画した7番こそ最高傑作ではないかと感じていたのだが、今回ヴェラー指揮の全集を通して聴いてみると、改めてその思いが強くなった。

第一楽章、冒頭からちょっと演歌っぽい臭さを帯びたメランコリックな主題が奏でられ、その後に優しく美しく雄雄しい、もうひとつの主題が現れる。何故かこの主題は、西部劇や、50年代日本の日活無国籍映画を想起させる。雄大な自然を背景に、馬に乗った主人公の姿が、長い影を引きずりつつ小さくなっていく。そんなイメージだ。おそらく、小林旭主演の「口笛が流れる港町」の主題歌と少し似たところがあるからだろう。
引き込まれ、その後、プロコフィエフらしい、というよりもソヴィエトの音楽らしい打楽器群の活躍など色々と面白い場面はあり飽きることが無い。そしていよいよ終楽章でまたこの主題が帰ってくる。何か、実際には体験していないけれど懐かしいような、物悲しくも明るい、古きよき時代の物語を味わった後のような、優しく暖かいものが胸に満ちてくる。
終結部は、作者オリジナルの静かに終わるタイプと、初演指揮者サモスードの要望で賑やかに終わらせるタイプとがあるが、この録音は後者。少しとってつけたような感があるけれど、国の青年たちに捧げる曲として構想されたものであるとすれば、賑やかな方がベターではないかと思う。

さて、この全集に不満は無いのだが、折角の傑作であるから、色々な演奏を聴いてみたくなる。しかし、選択肢があまり無い。何故人気が無いのだろうか。プロコフィエフらしい前衛的なところやグロテスクなところがあまり無く、通俗的といえばそうかもしれないので、そのあたりだろうか。残念だ。

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