マズアのマーラー9番。

ニューヨーク・フィルハーモニックは、マーラーが客演していたこともある歴史の古いオケで、知らなかったのだが、創立時期はウィーンフィルと変わらないそうだ。バーンスタインとのチャイコフスキー全集など持っているが、そのコンビのショスタコーヴィチはどうにも受け付けない(と、このことを書くのは何回目だろう)。他にもアナログ時代に持っていたワルターの大地の歌はこのオケだったように記憶しているし、ワルターとコロンビア響のベートーヴェン全集のうち、9番の終楽章だけはニューヨークフィルだったようにも思う。
兎に角、マーラー自身とも、その弟子のワルターとも縁があり、非常に早い時期にバーンスタインが全集を完成させたり(8番と大地は別のオケだが)と、何かとマーラーとは馴染み深いオケと言えるだろう。

一方クルト・マズアについては、正直、名前は昔から聞き覚えているが、聴いたことがない。ニューヨークよりもゲヴァントハウス管との活動の方が長く深いようで、旧東側を代表する指揮者であるはずなのだが、何故かあちこちのレビューではあまり評価は高くないようだ。しかし、この録音だけは評価が高いと言う不思議。とはいえ、ハイティンクの場合も否定的なレビューが多いけれど聴いてみたらそんなことはないわけで、まあ、こればっかりは感覚の問題でもあり、聴いてみるまでは何とも言えまい。

第1楽章、静かに始まる。少し音量が控えめか、と思っていたら、それなりに鳴らすところは鳴らす。しかし、若干線が細いというか、小ぢんまりした印象を受けた。尤もさして傷にはならない。きりっとコンパクトに纏め上げた、という感じだろうか。全体に情念とか昂ぶりはなく、訥々と、丁寧に進んでいく感じで、それ故濃い色合いと言うものが無いのは、ノイマンのマーラーに通じる様に感じた。これは個人的には好ましい。
ライブゆえか第2楽章、3楽章でところどころテンポが速くなりすぎるのが玉に傷だが、それも終楽章に入ると落ち着きを見せ、アンサンブルも何だかふくよかに豊かになる。そして、「死に絶えるように」と指示された結末、浄化され、癒され、気がつけば終わっている。これは確かになかなか素晴らしい。拍手がカットされているのも興を妨げられず余韻に浸れて良い。

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