バーンスタインとベルリンフィル。

マーラーの作品で最も素晴らしいのは交響曲第9番。その数多ある録音の中で特筆すべきが、バルビローリとベルリンフィルのもの。
そのベルリンフィルと、同じく一度だけこの曲を録音したのが、バーンスタインのこのCD。82分ほどあるようだがCD1枚に収まっている。

カラヤンのマーラーは聴いたことが無いのだが、カラヤンとのコンビでのベルリンフィルといえば、一糸乱れぬ統制、流麗な弦、的確な抑揚、といったイメージ。一方、バルビローリやバーンスタインと組んだ9番では、まずなにより、統制が時として乱れているように思える。
といっても、バルビローリの場合は、オケの皆がタクトにのせられて、ノリの良さで気持ちよく流れて行っている。片やバーンスタインの方は、何となく噛み合っていない雰囲気で、時々びしっと引き締められる瞬間があるのだが、そのうち気がつくとがちゃがちゃになっている。がちゃがちゃなのはショルティとロンドン響との録音なんかも同じだが、あちらは"楽譜のまま素で演奏したらマーラー本来の分裂気質っぽいところがそのまま出てしまいました"という雰囲気で、どうもこのぎこちなさとは趣を異にする。
また、音質においては、どうもリマスタリングで低域を厚くしている様に感じられ、しばしば繊細な弦が埋もれてしまうのがいただけない(良い機材を使っているわけではないのであまり偉そうな事は言えないが)。
ネット上のレビューでも賛否両論あって、どちらかといえば否が目立つ録音だが、なるほど聴いて満足感はあまり無い。終楽章に至っても、楽器間の音量のバランスなど違和感を感じる場面が多く、あれっとなってしまって浸れなかった。やはり一期一会の記録としての価値が、このディスクの商品価値の大半なのだろう。

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