マゼールのベートーベン第九。

1980年前後にオーディオに興味を持ち始め、機器の性能を発揮させるにはクラシックあたりを聴かないともったいない(ビートルズとかストーンズとかヤードバーズ等の60年代のロック系アナログ盤でハイファイを語るのは無理があった)と言う理由からクラシック音楽に手を出し、ちょうどデジタル録音のハシリで音質に定評のあったテラークレーベルの「展覧会の絵」を買ったらロリン・マゼール指揮で、そこから他のレーベルのマゼールの録音に手を出したり、という感じで、といってもLPレコードをほいほい買う金銭的余裕は無かったから大した枚数にはならずちょこちょことだが、マゼールの音との付き合いができていった。
その後アナログからCDに移行したのが90年代になってからで、アナログ盤はすべて中古屋に売り払い、本当に手元に置いておきたい物からぼつぼつCDを補充していったが、当時の優先順位としてはロック系が先だったので、マゼールのみならずクラシックそのものと縁遠くなった時期がある(その頃はまだクラシックの輸入盤は今時よりも値段が高かったように思う。安くても1,500円から2,000円の間ぐらいだったか。故に後にNAXOSレーベルが登場した時には驚いた。半信半疑でコシュラーのマーラー第1番を買ったのだが、現在は入手できないようなので買っておいてよかった)。
しばらくして、アナログ時代にバーンスタインのLPが気になりつつ買わずにいたショスタコーヴィチのCDに手を出し(ジャケットが気に入ってコンドラシンの全集版を分売で1枚ずつ揃えて行った)、そこから再びクラシックに傾いて、ゆるゆるとだが今に至っている。
こうして振り返るとマゼールと言うのは子どもの頃の学校の先生のような存在とでも言えるだろうか。そんなマゼールと懐かしいクリーブランド管の、どうも手持ちでこれと言うのが決められない第九のCDがあったので入手してみた。



さて、もともと苦手だったベートーヴェンであるから、持っている9番はワルター&コロンビア響(全集)、フリッチャイ&BPO、後はライブでサヴァリッシュ&コンセルトヘボウ管(全集)とノイマン&チェコフィルの4枚のみ。ワルターのは終楽章がどうにも能天気に聴こえるし、フリッチャイのはちょっとノイズが気になる他、じっくりと遅めの3楽章との対比のせいか終楽章が妙にせかせかして聞こえたりする。そしてライブはどうも苦手なので、セッションレコーディングで、これ、と言うディスクが欲しいわけだ。
1~3楽章は緊張感に耐える感じ。終楽章でカタルシスを得るのだが、お祭騒ぎは勘弁願いたい。と思いつつ聴き始めると、なかなかエッジが立っているが軽く切れ味鋭くというわけでもなく、いいテンションだ。録音がちょっとざらついている気がするし、弓があたる音やらがさがさぱたぱたと結構環境音を拾ってしまっているのは気になるが、スピーカで聴く分には問題ないだろう。終楽章は、大地の歌ではちょっといかつすぎると感じたジョン・ヴィッカースがこの曲、この演奏には合っているし、他の歌手たちもいい感じで、オケとのバランスも気にならない。なかなかいい演奏だった。

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