ジュリーニのマーラー、第1番。

EMIの全集から、カルロ・マリア・ジュリーニ指揮シカゴ交響楽団で、交響曲第一番。
これも、リマスタリングのおかげか、クリアで、各パートの音がそこそこ分離してなかなか鮮やかだった。シカゴ響の演奏は、ショルティ指揮のときの快活だが峻厳な雰囲気よりも、柔和で温暖に聴こえる。これが巷間でジュリーニを評するときの、「オケをよく歌わせる」ということだろうか。ジュリーニの録音は、シューベルトの未完成とグレート、ブルックナーの7番ぐらいしか聴いておらず、どれもさらさら流れて強いものが残らない印象があったが、さすがにこちらがよく聴いている曲だけに、彼の美質が少しだけだが感じ取れたように思う。
ただし、普段聴いているマーラーとは、少し違うなとは感じた。例えば3楽章、酔っ払って気持ちよく歌を歌っているのだけれどその酔っ払いの充血した目の奥にどうにも底の知れない闇が垣間見えているような、そこはかとない不安があるはずなのに、不安にならない。一方で終楽章中盤の弦のアンサンブルなんかは5番や9番のアダージョを髣髴とさせる美しさで流れていく。ほかの手持ちのCDでこんなことは無いのだが。
そして聴き終えても、マーラーを聴いたという感覚ではなく、ベートーヴェンあたりを聴いていたかの様な、おかしな感覚が残った。この曲は確か1888年、マーラー28歳の年に完成したと記憶している。マーラーの作品としては、まだ青く熟していないわけで、故に最近は後の曲たちほど魅力を感じなくなってしまっているわけだが、そうした若さとジュリーニの指揮とが相俟って、ちょっと違うマーラーになってしまったのだろうか。



1番をよく聴いたのは20歳の頃で、ワルター指揮、おそらくコロンビア交響楽団のLPだった。ソニーから、白いジャケットで出ていた。同じシリーズで他に、大地の歌(これはオケがNYフィルだろう)、2番、そしてもう一組が9番だったかどうだかよく覚えていないが、4種類持っていた。いつも金欠だったので、2枚組みのLPなどよく買えたものだと思うが、当時すでに古い録音であったからか、1枚ものが2千円、2枚組みが3千円台後半という、少し休めの価格設定になっていたような記憶がある(普通の新譜で2,500円というのが相場だった。廉価盤で1,500円とか)。それらの中では1番を一番よく聴いて、その次が大地の歌、残りの二組は2枚組みをひっくり返したり入れ替えたりが面倒であまり聴いた覚えが無い。今もなおCD入れ替えを面倒くさがる性質は四半世紀前から変わらず続いているようだ。



ワルターの録音では大地の歌もそうだが1番もアナログ盤を処分してから聴いていないので、CD入手して聴きたくなって来た。

コメント

人気の投稿