チャンネルNECO「めくらのお市物語」。

こんな映画があったことを知らなかった。
松竹は、ホームドラマ的なぬるい作品ばかりの会社だと思い、注意を払っていなかったにせよ、これはまいった。タイトルは、いわゆる"放送禁止用語"なのかも知れないが、差別表現を意図しているわけではないので、伏せたりはしない。

めくらのお市物語 真赤な流れ鳥
*このリンク、チャンネルNECOの番組紹介ページなので、放送終了後は閲覧できないかもしれない。4/20,23,29と、放送が残っているので、是非、見ていただきたい。

主役の、居合いを使う盲目の女流れ者を演じるのは松山容子。いま40歳代の私でさえ、ボンカレーの看板のおばさんとしか認識していなかった女優さんである。やや現代的できりりとした声、大きな眼を見開いての演技には鬼気迫るものがある。こんな作品を残していたとは知らず御見逸れした。
勝新太郎の座頭市が、どちらかといえば屈み気味で顔を下に向けつつ敵の気配を窺うのに対し、松山容子は白塗りの顔を、顎を上げ気味に上向きにして耳を澄ます(座頭市は斬りたくないけれどもやむを得ず斬るという屈託がある。お市には喪失感しかなく斬る事も斬られる事にも躊躇がない。それが姿勢に現れている?)。顔を上げている故に何処も見ていない目線が宙を彷徨い、異様な緊張感がいや増す。そして、直後に閃くすばやい刀さばき。鮮烈だ。抜き身で敵を威嚇しながら鞘を杖代わりに足元を探りつつ移動する演技も心憎い。

日活の渡り鳥、東映の昭和残侠伝や緋牡丹博徒、大映の悪名、座頭市、眠狂四郎、といった50年代末から60年代を彩ったプログラムピクチュア快作群の系譜に乗せても良いのではないかと思えてきた。シリーズの残り三作品もぜひとも放送して欲しい。

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