ノイマンのマーラー全集を聴き終えて。

通勤の往復で聴き続けた。

ノイマン/チェコフィル/マーラー交響曲全集

8番(1982)
オルガンがズンッと来て、合唱が始まる。他の曲と異なり、いきなりテンションが高い。ああ、いいねえ、と思うのだが、やはりこの曲は長すぎる(単に時間的にではなく、組み立てと経過時間とかいろいろ含めて、感覚的に、だ)。交響曲というよりは、あまりにも重厚長大な歌曲。正直、聴き通すのがしんどい。
なんて思っていたら、後半の中盤あたりから、ハープの響きに連れられた「罪深き女」のソプラノ独唱が始まり、その美しさにハッとさせられたりもするので、マーラーは侮れない。歌とオケのバランスもよく、コーダに向けて聴く者の世俗の垢が洗い落とされていく。

2番(1980)
学生時代にワルターのアナログ盤を持っていたが、苦手だった。今も、聴き通すのはしんどい。何故だろう。
それはともかく、他の曲もそうだが、録音スタッフの腕が良いのかもしれないが、歌が入ったときのオケとのバランスがよい。

3番(1981)
まず、滅多に聴かない。なにせ、長すぎる。非常に美しく、2番や4番よりも完成度が高いと感じるのだが、あまりに長い。3楽章までで、十分ひとつの曲として成立するぐらい長い。でも、美しい。4楽章から加わる歌声、クリスタ・ルードヴィヒのアルトもすばらしい。でも、やっぱり長い。

5番(1977)
ミロスラフ・ケイマルのトランペットが、控えめに入ってくる。まずこのトランペットからして90年代の演奏よりは歯切れが良い感じで、若々しく感じる。1、2楽章は曲調もあってかややピーキーでダイナミックな演奏。耳に痛い個所もある。3楽章でのどかな感じになってくると管も弦もふくよかに聴こえてきて、心地よく音楽に浸れる。そして4楽章でとろけるような恍惚感を得たあと、歯切れの良い終楽章、そしてフィナーレへ。すばらしいが、前半がやや荒っぽく感じたりもする分、この曲に関しては90年代の演奏の方がベターか。

9番(1982)
それほど同曲異演を聴き比べているわけではないので偉そうなことはいえないが、バルビローリ指揮ベルリンフィルの録音が今までのところベストである。それと比べると、ノイマン最後の録音は、水の様に透明な演奏を分析的なレコーディングで捉えたあまり、清明過ぎて濁りも揺らぎもなく、浮遊感が得られないのが不満だった。この録音はどうだろうか。
まずは、晩年の録音ほどではないが、録音が良いと感じる。マーラーはとにかく装飾的な楽器と呼べるのかどうか良く分からぬものも含めてあれこれ使わせるのだが、そうした音も、あるいは主題の裏で鳴っている低音弦とかも、なかなかよく捉えられて、曲の構造が見渡しやすい。
また、この全集の中では録音時期が遅いためか、1番、5番あたりで感じた荒削りな部分は影を潜め、いかにもチェコフィルという、こちらの先入観に沿った滑らかで美しい演奏が出来上がっている。反面まとまりが良すぎてバルビローリ盤ほどのノリのよさはないとも言える。しかしまあ、ノイマンの3つの録音の中では、解釈などに変化は無いように思うのだが、出てきた音はゲヴァントハウス時代よりも洗練されていて、最晩年の録音よりも生気があり暖かい。
第1楽章の浮遊感、第2楽章の弦のザクザクとした推進力はバリビローリ盤に譲るが、第3楽章後半から第4楽章、フィナーレへと続くあたりの美しさは、録音の良さも含めこちらに軍配が上がるだろう。

1番はクーベリック指揮バイエルン放送響、2、3、4番はあまり聴かないからパス、5番はノイマンの90年代の録音、6番はショルティ指揮CSOの代わりにこの全集の録音、7番はノイマン指揮ゲヴァントハウス、8番は飛ばして、9番はバルビローリ指揮ベルリンフィルとこの録音が並び立つ、というのが現時点での私家版マーラー選集になるだろうか。

ノイマン/チェコフィル/マーラー交響曲第5番

バルビローリ/BPO/マーラー交響曲第9番

とまれ、当面、デジタルオーディオプレーヤには全曲残しておこう。

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