ムラヴィンスキーの力。

ショスタコーヴィチを最初に手に取ったのは、15年ほど前のことで、コンドラシン指揮モスクワフィルの全集が分売されていた中から、いわゆる「ジャケ買い」で5番を購入した。それより遡って、高校生のときに、バーンスタイン指揮NYPOのデジタル録音のLPが鳴り物入りで売り出されたのだが、どちらかと言えば貧乏な家の高校生がLPレコード、それも新譜を買うと言うのはなかなか大変なことで、あれもこれもの選択肢の中から迷いに迷って1枚を買うという感じ。その次点で機を逃すと、一生縁が無いなどということにもなってしまうのだった。
しかしCD(出てきた当初は音質に問題があると言われ、オーディオファンからはしばらくの間懐疑的に眺められていたのだが・・・)がアナログレコードを駆逐し、そのCDの価格が下落し、バーンスタインのあれも昼飯代+αほどの額で入手でき、あれもこれもと買えるようになって、すると、満足できた録音にも、それを越える別の録音があるのではないかとか、好奇心のような不安感のような、結局は欲に過ぎないのだろうけれど、そういうものがむくむくと鎌首を擡げて来て、泥沼にはまっていくのだ。

ムラヴィンスキー最晩年のタコ5は、コンドラシン育ちの自分にはどうにも受け付けなかった。しかしそれがムラヴィンスキーのすべてではあるまいと、グラズノフ、シベリウスを聴いてみた。ライブで環境ノイズも含め録音はかなりひどい。しかし、演奏はなかなかいい。それよりももっとすばらしいのは、チャイコフスキーの5番。これは録音も悪くない(ビクター盤)。すごい。5番ってこんなにいい曲だっただろうか、と思える。

ムラヴィンスキーのチャイコフスキー交響曲第5番

というわけで、ムラヴィンスキーは侮れない。

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