ライプツィヒ時代のノイマンのマーラー9番。

チェコフィルの主席指揮者になる直前まで、ノイマンは旧東ドイツのライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団にいた。この時代をノイマンの最盛期とおっしゃる方もおられるぐらい、よい仕事をしていたらしく、気になってマーラーを3種入手した。



そのうちのひとつ、第9番。ノイマンにとって生涯最後の録音となった9番の、その時点から遡ること28年前の録音だ。

マーラー 交響曲第9番
指揮:ヴァーツラフ・ノイマン
オケ:ライプツィヒゲヴァントハウス管弦楽団
品番:Berlin Classics BC21872

長年連れ添ってきたチェコフィルと、4年間で離れることになったゲヴァントハウス管との差もあれば、独特の響きのドヴォルザークホールと、ライプツィヒのホール(当時、この楽団はあちこちに間借りして演奏会を開いていたらしい)との差もあろう。ノイマンの年齢、体力、解釈にも変化があるだろう。
ジャケットのノイマンの外見もしかりだ。昔の姿はスリムでかっこいい。



最晩年の録音は、日本人エンジニアが手がけて、かなり透明感の高いというか、見通しのよい音になっている。演奏とあいまって、ともすれば澄み切った水のように、味気ないとさえ思えてきかねない。そこが、バルビローリ&ベルリンフィルの、終始ゆらいだり弾けすぎたり、録音もいまいちで混濁したりしつつも、恍惚としたノリですべてが許されるような、あの心地よさには及ばないと感じてしまう。しかし、この60年代の録音は、若さゆえか、晩年の透徹した境地には達しておらず、メリハリ、強弱、味付けが感じられて、楽しい。それでも、やはり同じノイマンの指揮だなと思える節はあって、それはなんだろうと、約30年を隔てた二つの録音をつなぐ言葉を探して、「節度」かなと思った。どちらかといえばゆったりと、柔らかく始まり、やがてすべての楽器の音を丁寧に解きほぐすように導き出し、淡々と進んでいく。感情の高ぶりやその場の空気に流されず、訥々と。そこは変わっていないように思える。

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