チェコフィルあれこれ。

チェコフィルと言えば、ノイマン、という年代に属しているが、アナログ時代からチェコフィルの音源とは縁が無かった。今も、ノイマン晩年のマーラーのうち、5番と9番を持っているぐらいだ。
これらはポニー・キャニオンの日本人エンジニアによる録音で、非常に透明感が高く見通しの良い録音であり、全編柔らかくそれでいて贅肉の無い精緻な演奏だ(ただし、それによってマーラー特有の分裂気味のところとかごちゃついて混濁したりといったところが綺麗になりすぎているきらいはある)。

ノイマン、チェコフィルのマーラー

同じノイマンでも、南西ドイツ放送響とのヤナーチェクはかなりエッジの効いた硬め強め明るめの演奏だし、おそらくチェコフィルでもノイマン壮年期であればまた違った音なのだろう。
今聞いているのは、ノイマン以外によるチェコフィルの録音、2種。1964年、65年のものだ。

ドヴォルザーク ヴァイオリン協奏曲
指揮:ペーター・マーク
オケ:チェコフィルハーモニー
ソロ:エディト・パイネマン
品番:DG PROA-164(タワーレコード独自企画盤)

ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲

ショスタコーヴィチ 交響曲第5番・第1番
指揮:カレル・アンチェル
オケ:チェコフィルハーモニー
品番:コロムビア COCQ-84479

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番・第1番

ドヴォルザークは「幻の録音」とよばれているものの、タワーオリジナル復刻。パイネマンさんはびっくりするほどの美人であり、他にほとんど音源を残しておらず、演奏ももちろんすばらしいので、これが「幻の」とか「伝説」と呼ばれるのは納得だ。ルックスからは意外なほど枯れた音を出す。しかし、音色こそ枯れているが音の運びはしなやかで、芯の強さがあり、かといって直線的ではなく流麗である。
指揮がメンデルスゾーンを得意とするスイス人のペーター・マーク、ソロはドイツ美人、で、チェコフィルの音はと言うと、ノイマン晩年の音とは全く異なり、弦のエッジが立って、はっきりくっきりした演奏。もっともこれは、グラモフォンの録音の味であったり、リマスタリングの影響だったりするのかもしれない。

ノイマンの前任者アンチェルのタコ5は、びっくりするほどゆったりした丁寧な演奏。こんな5番は他に無い。4楽章の冒頭などは無声映画の早送りシーンのように滑稽なバーンスタイン・NYPの対極だ。落ち着きすぎていて不安になるほどだ。しかし、オケの音そのものは、やはり90年代の録音よりも颯爽として若々しく、反面、渾然と溶けるようなまろみはあまり感じられない。しかし、上のマーク指揮のドヴォルザークよりは、全体に柔らかいと感じる。

面白いものだなあと思いつつ、こうなると、中間の時期の録音、たとえばノイマン指揮によるマーラー全集あたりを入手して聴いてみたくなってしまう。こわいものだ。

ノイマンのマーラー全集

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