インバルのショスタコーヴィチ第5番

金曜日は東京出張だった。新幹線の中で聴こうと、インバル指揮フランクフルト放送響のタコ5を仕込んでおいた。

ショスタコーヴィチ 交響曲第5番
指揮:エリアフ・インバル
オケ:フランクフルト放送交響楽団
品番:DENON COCO-70407

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番/インバル

インバルの録音を聴くのは初めて。マーラーとショスタコーヴィチを得意とし、分析的であまり感情に走らないと言う評判は聞いている。
聞いてみると確かにその通りで、他の録音ではおぼろげに聞こえていた楽器が結構強く前に出てきたりする場面があって、楽譜に記された音をきちんと再現しようとしているのだろうな、と思える。しかし、バランス感覚はしっかりと働いている。
例えば第1楽章の後半、第一主題と第二主題が抗うように不協和に響く場面、アンチェルは双方の音量を同等にし、故にオケが統制を失いかけているかのような、破綻ぎりぎりの状況に陥る。しかしインバルは、第一主題の音量を抑え、うまくオケを誘導する(とはいえ、アンチェルの演奏は、その破綻ぎりぎり故に、後に続くフルートの第二主題の美しさが際立っているとも感じる)。
録音も良好で、誰のものか、息継ぎの音などもしっかり入っていて面白い。イデオロギー的なもの、「ショスタコーヴィチの証言」を引きずった「強制された歓喜」の表現とも無縁で、この雄雄しく美しく時に可笑しく時に愛らしい交響曲の全貌を丁寧に見せてくれる。国内廉価盤で価格も安く、初めて聞く人の最初の一枚にも良いのではないだろうか。

往路はその後、クーベリックのマーラー7番、復路はアンチェルのタコ5、もう一度インバルのこのディスク、そして、ショルティのマーラー6番。

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