ショスタコーヴィチの交響曲第5番。

これは、クラシック音楽の範疇では、もっともよく聴いてきた曲だ(といっても、コンドラシンのものばかりを長く聴いてきて、ほかの演奏に積極的に手を出すようになったのは最近だ。かつてバーンスタインに手を出して、ぜんぜんあかんやないか、と、他の演奏に対して慎重になりすぎてしまったのだ)。

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番&第3番/コンドラシン

ショスタコーヴィチにとっても、20世紀の交響曲としても、代表的な作品であり、一般的人気の高い楽曲のはずだ。しかし同時に、通俗的とか、懐古趣味的とか、けして好意的ではない評価に彩られた曲でもある。死に繋がるかもしれない批判と名誉の回復を繰り返す中での、安全策的な作品だったという見られ方も、大きなマイナス要因だろう。

個人的には、いつ強制収容所に入れられたり粛清されたりするやも知れぬと言うプレッシャーの下で、体制と大衆を睨みながら、どうやって奴等に涙を流しながら拍手させるか、そんな実験だったのではないかと思っている。だから、旧ソヴィエトとは何の縁も無い自分がこの曲に対するには、それにのっかって、ありのままに聴いて、うつくしいなあ、かっこいいなあ、で、良いのではないだろうか、と思う。

ショスタコーヴィチ 交響曲第5番
指揮:エフゲニー・ムラヴィンスキー
オケ:レニングラードフィルハーモニー交響楽団
品番:VICC-40255

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番/ムラヴィンスキー

ショスタコーヴィチ 交響曲第5番
指揮:広上淳一
オケ:ノールショッピング交響楽団
品番:TWCL-2013

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番/広上淳一

初演者ムラヴィンスキーの録音を、遅まきながら入手した。1984年、高齢での録音で、快速だが表情に乏しく、ビクターの20Kbitリマスタリングとやらを施してもなお、元のテープの音の悪さが気になる。ソヴィエトの作曲家の、初演指揮者による、お国のオケによる演奏と言う価値観が希薄な自分には、今ひとつ響くものが無かった。
精力的な活動を展開している広上さんの録音は、90年代半ばのデビュー盤のタワーによる再発。第4楽章はバーンスタインをちょっとだけ遅くした感じだろうか。可ではあるが、まあまあというところまでだろうか。

結局のところ、いまポータブルプレーヤに入っているのはこの3種。

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番・第9番/ハイティンク
自分が持っているのは全集の方だが、恰幅、パワーはコンドラシン&モスクワフィルに匹敵、録音は遥かに上で、言うことなし。キモというべき第4楽章の入り、一瞬遅くなってあれっと思うとそこから加速していくのも満足できる。

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番&第1番/アンチェル
第4楽章はちょっと個性的過ぎる気がするが、聴けば聴くほど、第1楽章の美しさがたまらない。行進が終わって、木管が主題を柔らかく吹くあたり、こうしたやさしく滑らかな美しさも兼ね備えていればこそ、ショスタコーヴィチは20世紀を代表する作曲家足り得たのだと思わせられる。

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番&祝典序曲/ムーティ
普通、といわれるだけか、ソヴィエト的な風味が全く無いと否定されるか。しかし、才気あふれるイタリア人指揮者と、(精神性に欠けるとか意味不明な謗りを受けることが多かったが)世界最高レベルであったろうオケとが、豊かに歌い上げた擬古典だ。

時々聞くのはこれ。TELARCレーベルで録音が良い。5番は普通に丁寧な演奏で、むしろ9番がいい。
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番・第9番/レヴィ

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