笑福亭たま独演会@コスモスシアター


笑福亭たま師、 1年ぶりの貝塚市コスモスシアターでの独演会。独演会といっても福笑師匠との親子会のようでもあり、他にもゲストがいるにぎやかなものだ。

開口一番はいつもどおり?の桂雪鹿さん、例によって携帯電話のマナーモードの物まねから、「看板の一」。ちょっと前に福笑師で聴いた気がするが、雪鹿さんもいつも開口一番を任されていて若手扱いということなのだろう―上方には階級制度が無いのでよくわからないが東京で言えば「前座」ではなく「二つ目」ポジションではないかと思う。雪鹿さんの師匠である文鹿さんが廃業しているが他の師匠の下に移ったりもされていないようでなおさらよくわからない…―けれど、なかなか軽妙にうまくまとめられた印象。

続いて露の瑞さんの「ちりとてちん」。年上、それも一回り以上という妹弟子がいて、というマクラはなかなか面白かった。昔バイト先のある理系の研究施設で、修士で入社して社歴が長い社員の方と、後から博士で入社した年上の後輩の方とがどちらが目上か言い争いになっているまさにその現場にいて、冷や冷やしつつこういうのはやだなあと、いたたまれなかったことを思い出すが、芸能の世界は年齢にかかわらず入門順である、というのがはっきりしていて気持ち良い。噺の方はメリハリが効いていてこちらもなかなか良かった。

続いてたま師が登場し、まず自作の「ヤマカン刑事」。そもそも新作落語を聞いた経験があまりにも乏しいので間違っているかも知れないが、上方の新作は東京の新作に比べて、設定や人物造形があまりぶっ飛んでいない印象がある。「そんなやつおれへんやろ」と笑うのではなく、「おるおる、あるある」という笑いというか。しかしこの「ヤマカン刑事」の馬鹿馬鹿しさは東京の新作に通じるものがある気がした。

これは全くの思い付きなのだが、東京では落語が古典芸能の一ジャンルとしてステータスを確保しており、新作をやる噺家さんたちは(円丈以降特に)自由に創造の羽を広げていくことができるしさらに高く飛ぼうとされている印象がある。古典でも結構奔放なアレンジをされることがある。一方上方では落語はひとたび衰退し、四天王がその復興に尽力し持ち直したものの現在でも演芸といえばやはり漫才が筆頭に来るだろうし、落語は東京ほどのステータスは得ていない。故に、落語というものの格を高く見せるために、何らかの「ありがたみ」を持たせようとしてしまうのではないか、新作を妙に「文化的」にしてしまったり、どこかに「ええはなし」をねじ込んでしまうのではないか。そんな気がしてきた。数十年前にたしか花王名人劇場だったか、三枝の「ゴルフ夜明け前」を観て、「これは面白いのか?」「落語としてやる意味は?」と感じたけれど、ああいう新作落語があっても良いだろうが、「ギンギラボーイ」や「MCタッパ」も、いかれてるけど素晴らしいと思うのだ。古典にだって「あたま山」とかクレージーなネタはあるし、それこそ「粗忽長屋」なんて常軌を逸しているではないか。
いや、待てよ、上方の新作落語がぶっ飛んでいないような印象を受けるのは、上方では普通の人でもちょっとおかしくて、奇矯な造形の登場人物であっても身近に感じてしまうだけかも…。

それはともかく、東京では落語家を分類して例えば権太楼師を「爆笑派」と呼んだりするようだが、上方で「爆笑派」を探すとすれば、福笑一門ではないかと思う。他でもない福笑師に入門したたま師であるから、私が思うような「ええはなし」感とは無縁の新作をこうして聴かせてくれるのは、非常に好ましい。

そして福笑師。こちらも自作の「金策幽霊」。これはもう、外連味というか、洒落がきついというか、やりたい放題というか。前に繁昌亭で東京のネタである「厩火事」を上方らしいちょっとウェットな人物造形でじっくり聴かせていただいたが、笑いの中にも夫婦の機微をじんわり聴かせる腕を持ちながら、一方で(詳しくは伏せるが)派手な演出、仕掛けを躊躇せずやってくるところが、福笑師の凄さだろう。

ここで仲入り、明けて師弟対談。会場からの質問に答える形式だが、襲名についての質問がこの日のハイライトだったろうか。そんなものは大した意味はない、「前座の名前のまま人間国宝になった方もおられる」という福笑師の言葉には、名前より芸で勝負だという覚悟を感じたし、古典を受け継いでいこうというスタンスの噺家ならアリ(伝承のカタチとしての襲名、ということだろう)ではないか、というたま師の現実的な答にも頷けるものがあった。

トリはたま師の「蛸芝居」。芝居噺とか、こういう殺陣というかアクションが豊富な噺が結構お好きなのか、この日も熱演であった。

よそからこのあたりに移り住んで長く暮らし、ここがたまたまたま師の地元で、落語会にも気軽に寄らせてもらっていたが、引っ越すことになったのでこれが最後になりそうだ。以後は繁昌亭で聴かせていただくだけになるだろうが、引っ越し先は繁昌亭へのアクセスがよいので、それはそれで楽しみだ。

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