山に雲が、ザアグザアグとカララカララ、そしてゴオウゴオウ。
川澤酒造の「山に雲が」のうち、まず特別純米酒「ザアグザアグ」を開けた。
五百万石を60%精米、高知酵母AC95-80で醸した特別純米酒。アルコール度数は15度、日本酒度は-5。
「高知県工業技術センターだより」2016年1月号によると、AC95-80は、平成18~19年の開発、日本酒度は+で辛口、やわらかい酸味を持つ、吟醸香の特徴としては酢酸イソアミル(バナナ様)・カプロン酸エチル(リンゴ様)ともに多い、とのこと。
特別純米酒と言いつつ吟醸香はまずまず出ている。「ワインのような」ということだが、日本酒としてそんなに違和感はなかった。酢酸イソアミルとカプロン酸エチルの両方が多いようだが、どちらかに偏っていないためか、CEL-24で醸した酒のような目を見張るほどのフルーティーさとは違う。故に、食事にも合わせやすい気がした。
含むと酸味は鋭くはないが厚みがある感じで弱くない。そして、香り、酸味が通り過ぎた後に米のうまみが残る。日本酒度は低いがそんなに甘いとは感じない。
これは、常用するにぴったりかも知れない。
そして次に純米大吟醸の「カララカララ」。結論から言うとこれまで飲んだ日本酒の中でベスト、という感想。
アルコール度数は14度、日本酒度は+1。酵母は高知のAA41で、日本酒度は+で辛口、酢酸イソアミルが多いという。酒米は地元四万十産の吟の夢で、50%精米。蔵元のコメントでは白桃のような香りとのことで、たしかにそれを感じるが、ザアグザアグより香りの主張は小さい気がする。
そして、するっと口に入る。炭酸を感じるが、それ以外はまるで水のようで抵抗が無いのだ。しかし喉を通り過ぎると、舌の下あたりに苦み、渋み、酸味、うま味が残っているのが感じられる。澄んで爽快で、しかし後には酒を飲んだ実感が残る。
落語の「試し酒」だったか、良い酒は酒の方から勝手に入って来るなどという言い回しがあったが、まさにそんな酒。
そして3本目、いろいろと過去に飲んできたCEL-24、それもスーパーCEL-24という酵母で醸された純米大吟醸の「ゴオウゴオウ」。
GoogleのAIは、「高知県の工業技術センターで開発されたオリジナル酵母『CEL-24』の中から、よりフルーティーで華やかな香りを出すように選抜された酵母」だと説明している。調べてみると、意識していなかったが、過去に飲んだ美丈夫も同じスーパーCEL-24だったようだ。
酒米は五百万石で50%精米。CEL-24はカプロン酸エチルが多くなる酵母だから、香りはリンゴ系。アルコール度数は、たいていのCEL-24の酒と同じく14度。
CEL-24に関しては、銘柄別、あるいは同銘柄の酒米違いなども含めあれこれ飲んだが、ものによっては甘さがどっしり腰を据えてしまってくどすぎると感じることもあり、最初にこの酵母を商品化した亀泉の、それもレギュラーのがやはり一番よくできているなという印象を持っていた。そして亀泉出身の代表が率いる川澤酒造のCEL-24は、亀泉のCEL-24を淡麗側に寄せた感じというか、CEL-24のフルーティーさはそのままに、甘さのバランスをとったのかなという印象。それにより、食事にも合わせやすくなっている。これもうまいが、カララカララを飲んでしまうと、ちょっと甘口が飲みたいときの酒、という、限定的なチョイスになるかもしれない。
三者三様、差はあるが総じて淡麗、そして、土佐酒の主流であろう辛口ではない。このあたりが川澤酒造の意図なのかなとちょっと思ったりしている。


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