お笑い怪談噺の夕べ Vol.19

 盆休みの初日、笑福亭福笑師が座主を務められる、「お笑い怪談噺の夕べ」を繁盛亭まで聴きに行った。
この日は三日間公演の千秋楽で、少し空席はあったが、まずまずの入り。


いきなり笑福亭たま師が登場。この会は三日間皆勤すると3,000円のキャッシュバックがあるそうで、会場に挙手を求めると、120人ぐらいのうち26人が手を挙げた。19回目、すなわち19年目の公演で、ここ数年やっているキャッシュバックだが、年々皆勤するお客さんが増えているそうで、25人ぐらいだろうと現金を用意したのだがそれをオーバーしてしまっているようで、さあ大変だと。
そんな会場とのやり取りを経て、演目は自作と思われる「ホスピタル」。病院の入院患者同士の会話で、心霊現象かと思えばそうではないというギャグをジャブのように連打しつつ、きっちりと怪談になっているところは非常によくまとまっているなあと感心。ネット上の怪談をよく見聞きするので、落語として笑わせるならどうなるのかわからないが、怪談として落とすならこういうさげではないか?と思いながら聴いていたらその通りだった。

そういえば、怪談社の糸柳寿昭さんがホストを務められる「怪談バー REQUIEM」という、メーテレの番組に、落語協会から柳家かごめさんと林家あずみさんがゲストで出演された回を観ていたら、かごめさん、あずみさんから「怪談の業界に落語とか色物とかが進出するのは迷惑ではないか?」といった趣旨の質問があり、それに対して糸柳さんは「歴史的に怪談はそもそも落語が起源なのでそちらこそ本流」といった意味合いの答えを返されていた。一方で小林信彦さんに「推理小説のパロディはそれ自体が推理小説になる」と言う言葉があり、そちらも踏まえると、たま師は、落語から生まれた怪談が時を経てある種定型化したそのなれの果てにある典型的な現代怪談のパロディとしての落語を作り、それ自体を怪談として成立させているということか。なんだか入れ子のような話で混乱する…。

続いて林家染雀師の「化物使い」。東京のネタとしてはいくつか聴いたことがあるが、いかんせん主人公の男のデリカシーのなさが好きになれず、どちらかといえば苦手なネタだ。しかしそういう風に描かないとお化けさえ悲鳴を上げるような話の展開にリアリティが生まれない。

その次は桂米左師の「皿屋敷」。東京の「お菊の皿」と同じ噺だが、お菊さんが休みを取る理由が風邪気味だからとのことで、毎日毎日働いて嫌になったから明日は休むという東京版のお菊さんより生真面目というか正直というか。

仲入りを挟んで旭堂南鱗師の講談、「江島屋騒動」。風邪でも召されていたか、少しお辛そうであったが、生の講談は初めてなので、なかなか面白く聴いた。お話しの中にもあったが昔は夏になるとテレビなどでも一龍齋貞水さんの怪談を見る機会があったなあと、少し懐かしくなった。

トリは福笑師の自作、「呪いの瓢箪」。弟子のたま師と同じく、やはりマシンガンのようなギャグの連発、誰でもわかるやろという導入からの幽霊出現、そして暗転して、客席に幽霊が登場。事前に幽霊へのリクエストを受け付けていたので出てくることはわかっていたわけだし、まして前日前々日に来ていたお客さんにはネタバレしているのだが、幽霊も会場もそれをわかってやり取りを進めるところが大阪らしい気がした。

コメント

人気の投稿